契約の際に「レビュー日」を決めておくことが重要
本連載の第10回でブラジル人は納期をあまり気にしないと述べましたが、早く仕上がっていても前倒しで納品しない傾向があるのがインドや中国です。
納期どおり納品すれば問題ないという意見もあるでしょうが、その分じっくりテストをしてくれるのかと思えば、そんなこともありません。「早く出してもし不具合を発見されたら、すぐに直さなければならなくなる」、あるいは「開発側に余裕があると思われて他のタスクの前倒しを要求される」などと考えているようなのです。
とはいえ、納期どおりに納品されるのであれば(遅れることも多いのですが)、それ自体に問題があるわけではありません。問題は意図せぬ成果物が納品されることです。そこで、中国やインドに限らず、契約書で成果物のレビューや検査期間を明記したうえで納品日を記載することが重要です。
これが日本だと、契約書に納品日は記載しますが、その後プロジェクト計画を立てる段階で、レビュー日等を決めていきます。グローバル・プロジェクトではそうではなく、契約段階でレビュー日を決めておくことがポイントとなるのです。
期間に余裕を持ち、仕様変更のための予算確保を
日本のベンダーも昔よりはだいぶ「硬く」なりましたが、緊急依頼や優先度変更でスケジュールを変更してもらえることは多いようです。
こういったことは、海外ベンダーではそもそも不可能だと割り切る必要があります。契約主義なのと、内部統制が厳しく、契約以外のことをすると「コンプライアンス違反」と言われる怖れがあるからです。
これは本来日本でも同じことなのですが、日本のITベンダーが相手だと、関係が良好な場合は話し合いで調整できることが多いため、初めて海外ベンダーと仕事をした人には、その「融通の利かなさ」は想像以上ではないかと思います。
したがって、できるだけ契約段階で仕様を固めて、変更がないようにするのが一番ですが、そうもいかないというケースが多いのが悩ましいところです。
そこで現実的な対応策は、期間に余裕を持ち、仕様変更のための予算を確保しておくことになります。私たちも、実際にはこのように進めることが多いです。
しかしながら、それも厳しいというプロジェクトもあるでしょう。そういう場合には、ベンダー選定の段階で、「融通の利く」会社を選定することになります。具体的には、「今後も日本企業の仕事をしたい」と考える会社を選ぶということです。
ただし、そのような会社でも無条件に何でもしてくれるわけではありません。例えば、発注先がやるべき課題整理や、初期分析作業などをこちらが支援することで、その分早めに成果物を出してもらうといった、ギブ・アンド・テイクを基本とした交渉をすることが重要です。