今回は、米国の名だたる富裕層が「社会貢献」に取り組む理由を説明します。※本連載では、松木飯塚税理士法人の代表社員で、税理士、中小企業診断士の飯塚美幸氏の著書、『〔平成30年度税制改正対応版〕目的別 生前贈与のポイントと活用事例』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、平成30年度税制改正に対応した、社会貢献のための「贈与」の活用事例を紹介します。

死後、自身の資産の半分以上を寄付する富裕層も

ギビング・プレッジ(The Giving Pledge、寄附誓約宣言)は、2010年6月にマイクロソフト社会長のビル・ゲイツ夫妻と投資家のウォーレン・バフェットが始めた寄附啓蒙活動です。

 

資産家が生前若しくは死後に自身の資産の半分以上を慈善活動に寄附するという誓約(プレッジ)をすることとし、参加者には、映画監督ジョージ・ルーカス、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグ、オラクルCEOラリー・エリソン、フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ等、錚々たる資産家が名を連ねています。

寄附金額は基本的に「全額所得控除」される米国

米国で富裕層が自らの名を冠してファウンデーション(基金)を作るといった社会貢献を英雄的行為ともてはやされるには理由があります。

 

徴収された税金の使い道は官僚に任されますが、基本的に寄附金額は全額所得控除される米国では、寄附団体が主導的に資金を使うことで独自の政策を実現していくことも可能です。

 

ビル・ゲイツがビル&メリンダゲイツ財団に多額の資金を寄附し、財団が独自の公益活動を展開するという仕組みであり、いわばシビリアンコントロールの一形態として寄附制度が機能するからです。

 

米国の寄附金額の対GDP比はOECD加盟国を中心とする36か国中トップ、日本は29位。米国の1人当たり寄附13万円に比べGDPは世界3位の日本は2,500円です(三菱総合研究所調査)。日本では、個人は所得の40%限度、法人は損金算入限度とされているからです。

 

寄附文化の差は、宗教の違い、そしてコミュニティを戦いにより形成してきた歴史の違い、ノブレス・オブリージュ(持てる者が責任を負う)という文化の違いだけでなく、米国では100万超の団体が税優遇対象であるのに、日本はNPOなどが対象団体になるための審査とチェックが極めて厳しいために2万超しかないことも、その理由の一つでしょう。

[平成30年度税制改正対応版]目的別 生前贈与のポイントと活用事例

[平成30年度税制改正対応版]目的別 生前贈与のポイントと活用事例

飯塚 美幸

新日本法規出版

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