今回は、「社団・財団」を組成して資産を贈与し、公益目的に活用した例を見ていきます。※本連載では、松木飯塚税理士法人の代表社員で、税理士、中小企業診断士の飯塚美幸氏の著書、『〔平成30年度税制改正対応版〕目的別 生前贈与のポイントと活用事例』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、平成30年度税制改正に対応した、社会貢献のための「贈与」の活用事例を紹介します。

資産の一部を、新たな研究財団法人の設立に利用

<Case54> 社団・財団を組成して贈与

 

●活用事例

 

保谷氏は、薬品研究会社を育て上げましたが、結果的に外国資本に譲渡し、自分は引退をしました。

 

日本の研究開発についての政策や資本の脆弱さを痛感した保谷氏は、M&Aで得た莫大な資金のうち夫婦2人の老後資金のみを残し、残額を新たな研究財団法人の設立に充てることにしました。もちろんその資金は相続税非課税、所得税の所得控除となりますが、自分の名を冠した財団の設立は、保谷氏にとっては税金以上の意味を持つものです。

 

新設財団には、創業者一族として、自分と妻、別に起業している長男が理事として入り、天下りになりがちな他の理事が財団の目的に沿った実効性ある活動を適切に実施するかどうかをチェックしていきます。

将来にわたり保全したい資産等の「受贈団体」にできる

●活用の効果

 

国等への寄附はその団体の利用目的に期待して行いますが、目的とする適切な団体がない場合、また自分の資産を公益目的に利用し保全しようとするなら、自ら公益社団や財団を組成してそこに資産を贈与するケースもあるでしょう。

 

コストと時間がかかり一族だけで支配することはできませんが、資産を非課税で贈与でき、財団を通じて将来にわたって活かし、一族の名と実を残すことでき、かつ、相続税の対象ともなりません。

 

公益認定を受けるには、主務官庁の認定によるハードルがあるため、非営利の一般社団法人や一般財団法人のうち、特定一般法人として機関構成や基金制度を組成できれば、将来にわたって保全したい資産等の受贈団体とできるでしょう。いわゆる究極の相続対策と呼ばれる方法です。

 

ただし、自社株については、国等や公益法人等に贈与すると、自社の支配関係に影響してしまいます。特定一般法人とならずに社団や財団を組成して、非課税優遇を受けることはできなくても自社株を贈与し持株会社として活用すれば、現行税制では、会社支配権維持と相続税切り離しのための方法となります。

 

この話は次回に続きます。

[平成30年度税制改正対応版]目的別 生前贈与のポイントと活用事例

[平成30年度税制改正対応版]目的別 生前贈与のポイントと活用事例

飯塚 美幸

新日本法規出版

事業承継税制納税猶予特例の新設や一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直しなどの平成30年度税制改正を反映した最新版! 多様な生前贈与プランを紹介! ◆「子や孫への資金援助のため」「争族対策のため」などの目的…

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