資産を多く保有していたり、利益が安定的に出ていれば、当然に企業価値は高まります。一方で、資産が少なかったり、利益が出ていない企業であっても、買い手にとってはどうしても手に入れた価値を保有しているケースも少なくないものです。今回は買い手が求める条件について考えてみます。

高く売れるための一般的な条件

自社の魅力を最大限に引き出し、第三者(買い手)に「ぜひあなたの会社を買いたい!」と感じてもらうためには、どのようにしたらいいでしょうか。


まず、会社を高く売る条件として、次の3つが挙げられます。


①しっかりとした純資産がある
②安定して利益を出している
③買い手にとってのメリットがある

①はこれまでの事業で積み上げてきたもので、土地や不動産、現預金といった形になっている資産から負債を引いたものです。当然、純資産が多いほど、M&A(第三者への事業承継)の売買金額は一般的に高くなります。 
 

②の毎年の利益が安定しているも、もちろん大きなアドバンテージです。 
 
③は営業権や販売ライセンスといった権利や、販売網や技術力など、買い手が欲する条件を保有していることです。

①~③がすべてそろっていれば理想ですが、すべてが絶対条件では決してありません。買い手が興味を示すポイントは、それぞれ異なります。

「収益性」が高ければ、純資産が少なくても売れる

ここに純資産が10で、利益は10の計20の価値をもつA社と、純資産が5で利益はA社と同じ10の計15の価値をもつB者があるとします。純資産にのみ着目すれば、A社がB社に優りますが、②の利益の観点に立てば、別の見方も可能になります。

 
それは純資産がA社の半分しかないにも関わらず、B社がA社と同額の利益を出している点です。収益性を重視すれば、B社がA社に優ると考えることもできるのです。

純資産額よりも毎年の利益の額と収益性に着目してM&Aを検討している買い手からすれば、純資産が10あるA社より、純資産が5しかないためA社より安く買える可能性のあるB社に魅力を感じることもあるわけです。③のその他のメリットも同様で、①や②の不足をカバーしてくれることがあります。 
 
このように、①~③のどの点が評価されるかは、買い手の求めるところによって、ケースバイケースで変化するといえます。資産がないから、あるいは利益が出ていないからといって、M&Aが成立しないわけでは、決してないということです。

 

 

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

オーナー社長のための会社の売り方

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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