本連載は、業界屈指の自己売買部門を持つことで知られる山和証券の執行役員ディーリング部長・工藤哲哉氏の著書、『百戦錬磨のディーリング部長が伝授する「株式ディーラー」プロの実践教本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、中長期投資で利益を出すプロの技を直伝します。

短期的な相場変動に振り回されずにポジション操作を

中長期投資の場合、事前準備として必要になるものは日計りやスイングトレードに求められるものと大きく違います。場中にマーケットでやるべきことはそれほどなく、企業調査や分析に割く時間が大きく増えます。

 

中長期投資における投資判断は、大半がファンダメンタルズを基本にしていますが、ファンダメンタルズは短期間で大きく変化するものではないので、ロングショートであれば、短期的に相場が上下しても、あまり気にする必要はありません。逆に、ファンダメンタルズを根拠にしてポジションをとっているにもかかわらず、短期的な相場変動によって投資判断がブレてしまうことのほうが問題です。

 

ロングオンリーでも、運用の背景にある前提条件(ロスカット・ラインなど)が、リスク許容度の高いものであれば、短期的な相場変動に一喜一憂しなくてもいいでしょう。言い方を変えれば、中長期的な視点に立ってファンダメンタルズの変化をとりにいっている以上、短期的な相場変動によって過度に振り回されることがないようにポジション・コントロールをする必要があるということです。

業界研究・企業研究・銘柄分析に注力

また、自身のトレード分析というものはそれほど重要ではなくなり、業界研究や企業研究・銘柄分析に充てる時間が増えていくはずです。情報収集の情報源は『会社四季報』やアナリストレポート、各企業の適時開示情報のほか、決算説明会も重要です。決算説明会についても、最近はその様子を、映像でストックしている企業もあります。

 

投資信託やヘッジファンドであれば、ファンド・マネジャーやアナリストが直接、企業を訪問し、数字の裏付けをとるほか、経営者の資質や会社の雰囲気など、公表資料だけではわからない情報をリサーチします。

 

一方、急速にコンピュータの処理性能が高度になり、AIも活用され始めている昨今では、データ分析を基にして株式運用を行なう投資会社も増えています。いわゆる「ビッグデータ」を用いてデータを分析したり、AIに学習させたりしながら、運用ストラテジーを構築していくのです。こういったアプローチも「クオンツ」の一つです。

 

ただ、株式市場はあまりにも複雑で、さまざまなファクターによって変動するため、中長期投資のように投資期間が長くなるほど、相場変動を左右する要素が非常に多くなります。そのため、コンピュータ・プログラムを用いた投資のアプローチは、まだ発展途上であり、長期運用の世界では短期売買に比べればマイナーな存在にとどまっています。

百戦錬磨のディーリング部長が伝授する 「株式ディーラー」プロの実践教本

百戦錬磨のディーリング部長が伝授する 「株式ディーラー」プロの実践教本

工藤 哲哉

日本実業出版社

プロは何を考え、どうやってトレードをしているのか? 取引における日計り、スイング、中長期の具体的なテクニックからメンタルなど、「株式ディーラー」プロの戦略を伝授。 個人投資家にも大いに役立つ情報が満載の一冊です…

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