「金利を取らない」というイスラム金融のシステムは、果たしてどのようにして成り立っているのでしょうか。イスラム金融について、スリランカの記事を元にしてお伝えしている連載の2回目です。

金利の概念はないが、金利に影響を受ける場合も・・・

イスラム金融は世界中でいくつかの課題に直面している。一番大きな課題は、金利が物を言う国際市場でイスラム金融の可能性をいかに知ってもらうかだろう。イスラム法であるシャリーアによれば金利は望ましくないもの、あるいは禁じられたもの(ハラーム)と見なされるため、イスラム金融では金利を課すことも支払うこともない。

 

イスラム法学者によれば、リバー(アラビア語で利子・高利の意味)の禁止は、他の大半の宗教の教えと矛盾しない。聖書には「兄弟に利息を取って貸してはならない。金銭の利息、食物の利息などすべて貸して利息のつく物の利息を取ってはならない」(※1)と書かれており、コーランには「アッラーは商売はお許しになった、だが利息取りは禁じ給うた」(※2)と綴られている。また他の大半の宗教も、他人を搾取してはならないこと、約束は予定通りに守ることを説いている。

 

一般的な銀行は融資に利子を課し、預金する顧客にはそれより低い金利をつけて返金する。その差額が銀行の収益となり、銀行の運用コストに充てられる。一方で、イスラム銀行では利害関係者が利益も損失も分配することになっている。そのため、一方的であるリバーは禁じられているのだ。そこでイスラム銀行では、マークアップ方式による価格設定やリース、パートナーシップの形態でビジネスを行っている。

 

しかし金利という存在がないにもかかわらず、実はイスラム銀行は利率や相場に影響を受ける可能性がある。イスラム金融機関のいくつかは原価に利益を乗っけて価格設定を行うマークアップを、一般の銀行の利率基準に合わせてしているのではと言われている。このため特に一般的な銀行とイスラム銀行の両方が存在する国では、イスラム教徒であっても、従来の銀行の模倣に過ぎないとしてイスラム銀行に距離を置く人々もいる。

イスラム金融の3つの収益パターンとは?

イスラム銀行は銀行であるからには、多くのリスクを引き受けながらも、利益を上げていかなければならない。そこでイスラム金融機関は主に次の3つの方法で利益を稼いでいる。

 

まずは損得分配という考え方だ。この考えは、ムダーラバ(事業者と出資者で損得を分配するパートナーシップ形態)を代表に、全てのイスラム金融の商品の根底にある。ムダーラバは、顧客が預金という形で銀行とパートナーになった時点から始まる。銀行は預金を使って、ある特定の事業に投資あるいは参加し、その結果、損得のいずれかが生まれる。もしその事業が利益を生めば、銀行はこの利益を顧客(預金者)と分配するという流れだ。

 

ポイントは、ここで生まれた利益は金利ではなく、その人の投資上の利益だと見なされる点にある。よって、その事業の結果により利益分が定まり、もし損失を出してしまった場合には、理論上は資金提供者(預金者)はお金を失い、銀行にとっては消費した時間と労力が無駄になる。そういう考えのもと、双方はジョンイント・ベンチャーとして損失を平等に抱えると見なされる。

 

これでは預金者のリスクが高いように思われるが、「スリランカを含めて、いくつかの国では、最低限は資金が守られる必要があると考えています」とスリランカでパイオニア的存在として、イスラム金融やタカーフル(シャリーアに基づく保険商品)の研修・支援をする企業の幹部であるMuath Mubarak氏は説明する。

 

次回はイスラム金融が収益をあげる残り二つのパターンについてお伝えします。

 

※1口語訳聖書(申命記 23:19)

※2井筒俊彦訳『コーラン』(2:276)岩波文庫

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Demystifying Islamic Finance」を、翻訳・編集したものです。

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