給与と年金を両方もらうと「年金が減る」!?
(1)在職老齢年金
年金を受けながら働く場合に在職老齢年金という制度があります。「給与と年金の両方をもらうと年金が減らされる」といわれているものです。
在職老齢年金を簡単に表すと、次のとおりです。
60代前半の年金停止額=(給与+年金月額-28万円)÷2
60代後半以降の年金停止額=(給与+年金月額-47万円)÷2
ただし、男性の場合、2021年には60代前半の年金はなくなります。女性の場合はその5年後です。また、60代後半以降で給与と年金を足して月47万を超えるのも現実的ではありません。誤解が多いのですが、個人事業主で厚生年金保険に加入していない人は、いくら稼いでも年金は満額もらえます。
以前受けた年金相談者のなかに、定年後に個人事業主になり、収入が多いから年金はもらえるはずがないと、請求せずに65歳になる直前まで放置されていた方がいました。
当時の年金は60歳からの満額支給です。定年後その方の収入は多くても厚生年金には加入していませんでした。早速手続きをしたところ、5年分遡ってもらった年金は1千数百万円でした。
これは私見ですが、在職老齢年金は見直されるか必要なくなるだろうと考えています。
「年金生活」という言葉はすでに死語
(2)年金と寿命
少子高齢化と終身雇用の崩壊は、若者のフリーター増加と女性の社会進出、そして高齢者の就業をもたらすことになりました。年金の受け取り開始が65歳になり、老後の不安も高まる中高齢者自身が職を求めています。
現在の国民皆年金制度は、1961年にスタートしました。時代はいまと比べてどうだったでしょうか。
1961年の、男性の平均寿命をご存知でしょうか。なんと65歳です! 現在年金を受け取れる年齢と、年金制度がスタートした当時の寿命が同年齢なのです。
いま2人に1人は、90歳以上生きるといわれています。長寿になったので働く年齢が延びるのも自然の流れではないでしょうか。人は社会から必要とされたいと感じる生き物ですから。
かつて「何歳まで働いたらいいでしょうか?」という年金相談を受けた当時、その理由は次の3つでした。
①まだ働ける
②子どもが独立していない
③あと何年働いたほうが得なのか
このような相談を寄せる人は、期間が足りないか、44年の長期加入者特例を受けたいなどと考えている人です。
現在においては、収入と生活の問題です。何歳まで働かないと老後資金が足りないかもしれない、介護状態になったらどうしようなど、将来への不安もあります。
「年金生活」という言葉は死語になっています。いま一度、キャッシュフロー表という財布の耐用年数を考えてみてください。キャッシュフロー表を検討していくと、何歳まで働くべきかの、答えの一つが出てきます。
場合によっては、妻も働かなければならないかもしれません。いま私が講師を務めている職業訓練校にも、男女を問わず60代の受講生が来ているのが現状です。キャリアコンサルティングという職業相談で、個別事情も含めて彼らのさまざまな悩みを聞いています。
超高齢社会においては、健康でいる限り、職業人生活に定年がない時代になったともいえるでしょう。