個人の相続税・贈与税対策と自社株対策は一体で実施
前回に引き続き、タイプ別マトリックスの各タイプを見ていきます。今回は、タイプ4とタイプ5について解説します。
【タイプ4】個人名義の資産が多く相続に不安を感じているの場合
現預金をはじめ、土地・建物、ゴルフ会員権など、オーナー社長の個人名義の資産が多いのがタイプ4です。個人名義で保有する土地・建物を法人に貸し付けているケースも多くあります。社長の年齢は60代後半〜70代前半。タイプ3と同じく、事業承継についても検討しなくてはいけない時期に来ています。
かつては、法人税率が高かったことや、土地・建物の価格が右肩上がりで上昇していたことから、資産は会社に残すより個人で持つほうがよいという考え方が一般的でした。そのため、タイプ4には年齢の高いオーナー社長が多いのです。
個人資産の目安としては3億円以上。理由は、配偶者がいる場合、相続財産に対して1億6000万円までは配偶者控除が受けられるため、相続財産が1億〜2億円の範囲なら相続税の負担感もある程度抑えられるからです。
個人名義の資産が多いだけに、将来の相続時には莫大な相続税がかかってしまい、後継者がデメリットを被るのではないかと非常に不安を感じています。
なお、タイプ3との違いは、利益を会社に内部留保するか、個人で保有するかという点ですが、実際にはタイプ3とタイプ4の両方に当てはまるという方も少なくありません。そもそも、自社株対策と相続税・贈与税対策は、片方だけ行えばよいものではなく、両方の対策をトータルで取っていく必要があります。
贈与税・相続税対策には、次のようなものがあります。そのなかで、新しい方法として注目してほしいのが一般社団法人を利用した対策です。これは、剰余金の分配を目的としない社団である一般社団法人に個人の財産を移し(生前贈与、または売買)、財産を個人ではなく、一般社団法人が保有する方法です。これにより、将来にわたって相続税の問題が発生しなくなります。
●相続税対策の柱として使いたい「一般社団法人」
●「信託」の利用で議決権を維持しながら株を生前贈与する
●「低解約返戻金型逓増定期保険」を使って財産評価額を圧縮する
自社株対策で活用できるオペレーティングリース
【タイプ5】少人数経営で資産の多い不動産業の場合
事業は順調で多大な利益が上がっているものの、従業員数が少ないために、自社株評価が高くなってしまい、有効な自社株対策が実施できないという悩みを抱えているのがタイプ5です。
不動産業でも、物件管理などが中心であれば事業の拡大に伴い従業員数は増えていきます。一方、販売や賃貸が中心の場合は、従業員の数はそれほど多くないのが一般的です。つまり、タイプ5に当てはまるのは、販売や賃貸がメインの不動産業が多いといえるでしょう。
多額の資産があっても従業員数が少ないと、自社株の評価方法の関係で一般的な自社株対策が取れません。そうなると、生前贈与あるいは相続時に、多額の税金がかかり、スムーズな事業承継も困難になってしまう恐れがあります。タイプ5に当てはまる場合は、ほかのタイプとは異なる対策の実施が必要です。
なお、ここでは業種を不動産業に限定していますが、他業種でも「多額の資産があり従業員が少ない」会社は、ここに当てはまる可能性があります。たとえば、上場企業オーナーで、保有する自社株の管理会社を運営しているケースなどです。
このタイプの場合、前述のとおり、通常の自社株対策を取っても株価を引き下げられません。そこで、自社株対策が取れるように、まず「会社の規模を変える」ための方法を実施します。そのために、自社で航空機のリースを行う「オペレーティングリース」を自社の事業として取り入れます。
●オペレーティングリースの活用で自社株の評価を引き下げる
オペレーティングリースを使うと、売上高が飛躍的に伸び会社規模を「大会社」にできます。「大会社」になれば、次のような自社株対策が実施可能です。
●時価発行増資を使って相続財産を圧縮する
●持株会社の設立で株価の低い株式に持ち替える
●相続税対策の柱として使いたい「一般社団法人」
次回は、タイプ6について見ていきます。