今回は、離婚時に請求できる「財産分与」の種類を見ていきます。※本連載は、離婚カウンセラーとして多数の離婚問題を解決してきた、岡野あつこ氏の執筆、弁護士・柳田康男氏/弁護士・山下環氏監修の『最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて』(日本文芸社)の中から一部を抜粋し、離婚で生じるお金の問題を見ていきます。

結婚前の貯金・所有物、親の相続で得た財産は対象外

財産分与というのは、本来は婚姻中にお互いが築いた財産を精算することです。財産分与が意味する範囲はたいへんに広いですが、離婚すれば基本的に請求できる権利です。

 

【財産分与の種類】

 

●清算的財産分与 婚姻中の共有財産、実質的共有財産の精算

 

財産分与といえばほとんどがこのことです。結婚前の貯金・所有物、親の相続で得た財産は「特有財産」として一部の例外があるものの財産分与の対象になりません。

 

●扶養的財産分与 離婚後の弱者に対する扶養

 

離婚によって生活ができなくなる夫婦の一方の暮らしの維持が目的です。経済的に弱い立場の配偶者が、自立をするまでの援助として支給されるものです。基本的には、清算的財産分与も慰謝料も請求できない、できたとしてもそれだけでは生活できないときに請求します。

精神的苦痛に対して慰謝料の請求も可能

●慰謝料的財産分与 離婚による慰謝料

 

最高裁判所は、財産分与に離婚による慰謝料を含めることができるとしていますが、精神的な損害に対して十分に補てんがされている場合は慰謝料を請求することはできません。

 

慰謝料的財産分与を含めて財産が分与されても、精神的苦痛に対して十分に補てんされていないと認められた場合には別に慰謝料の請求ができます。

 

■過去の婚姻費用の精算

 

多くは「婚姻費用分担請求」として処理されますが、未払いの場合、財産分与の中で考慮されることがあります。

 

ADVICE

財産分与は、隠されたり、使われたりして結局もらえなかったという人もいる。離婚の意思を相手に伝える前に財産を把握しておく。

 

[図表]財産分与の種類

最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて

最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて

岡野 あつこ 著、柳田 康男・山下 環 監修

日本文芸社

離婚カウンセラー、夫婦問題研究家として26年間、約3万件の相談実績のある著者が実例をまじえ、離婚に関する、知っておきたいことすべてを具体的に解説。お金の問題、子どものこと、法律知識をわかりやすくアドバイスする。

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