習近平政権になってから目立って厳しくなった腐敗汚職の取り締まり。今回は、そうした腐敗汚職に関連した新語、流行語について見ていきます。

習主席の決意発言から流行した「打虎拍蠅」

腐敗汚職に関連する新語、流行語は、以前から、例えば、資産、家族を海外に置き、自分はいつでも海外に逃げられるよう、身軽な状態にしている役人を指す「裸官」などがあるが、習政権になってから腐敗汚職の取り締まりが注目され、増加している。

 

第1回で述べた、昨年最も流行した1文字「藍」は、腐敗汚職の関係でも使用された。杜甫の詩「冬到金華山観」にある「上有蔚藍天」、上には尉藍(紺碧)の空を引用して、「藍」に汚職摘発で上層部が清廉になることへの人々の期待が込められたのである。

 

 

習主席の「虎も蠅もたたく」汚職摘発の決意発言から「打虎拍蠅」が流行、「老虎」は薄熙来や周永康らに代表される大物、「茶蠅」は一般の役人を指すが、地方で農地収用などの大きな権限を持っている「茶蠅」が何億元という汚職をしている場合も多く、一般の人々にとって遠い存在であることには変わりない。そこで人々は彼らを「虎蠅」と呼ぶようになった。

 

さらに最近では、清朝の特権的な世襲王爵になぞらえ、誰も「鉄帽子王」であってはならない、つまり、腐敗汚職取り締まりの対象外にすべきでないこと、また腐敗汚職防止の規則は、実効が上がらない「不帯電高圧線」だと揶揄する声が聞こえる。腐敗汚職の形態が複雑化し、親族や関係者が共謀して腐敗汚職をしている「共腐関係圏」事例が多いこともネット上で指摘され始めた。

汚職事案の増加は、摘発強化の成果か、汚職の蔓延か?

中国最大のシンクタンクである社会科学院が、かつて流行語のひとつとして選んだ「光盤」も、腐敗汚職に関係している。元来はコンパクトディスクの意味だが、ここでは「光」すなわち「・・・だけ」、「盤」すなわち皿で、きれいに食べて皿しか残っていないという意味になる。その後、「光盤行動」が節約を奨励し、浪費を慎む行動を指すようになっている。

 

本年3月全人代における最高人民検察院工作報告によると、収賄・横領等で100万元を超える汚職事案は3664件(前年比42%増)、立件された役人は5.5万人(前年比7.4%増)、うち閣僚級以上の高官は28人だった。

 

習政権下、党や政府と密接な関係にある国有企業幹部の汚職摘発も多い。当局が公表しただけでも、昨年から本年前半にかけ、115名の国有企業トップが腐敗汚職の嫌疑で取り調べを受け、または拘留されて「落馬」、失脚した。中石油、中石化、華潤、南方航空公司等一連のグローバル企業が含まれており、何れも党高級幹部でもある。また、巨大な予算を基に独占的地位を持つエネルギー関係の国有企業幹部が24人と、全体の5分の1以上で最も多いという。

 

これらは、摘発を強化している成果と評価するべきか、腐敗・汚職が蔓延していることを憂うべきものなのか、数字の判断は難しい。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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