▼魔国・特別議会
幽霊議長「……議論は尽くされた! これより決議に移る!」
魔王「議員一同のご意見、大統領として興味深く拝聴した。この議案は、それぞれの立場を尊重したものになっていると自負している」
吸血男爵「さすがは魔王さま!」
暗黒竜王「そのご慧智には恐れ入るばかり……」
魔王「まず竜族を始め、人間との関わりが薄い種族においては、人間を絶滅させたいという意見が強かった」
暗黒竜王「いかにも! 人間はこの大地を蝕む害虫そのもの。1匹残らず駆除すべきだ」
スライム王「ぐしゅ! ぐしゅぐしゅ!(そうだそうだ!)」
アークデーモン「この地は魔族のものだ!」
魔王「その一方で、吸血鬼や狼男など、人間との関わりが深い種族は、人間の絶滅には反対だった……」
吸血男爵「さよう。人間は栄養価の高い食料であり、奴隷として使うことも可能です。絶滅させるのではなく、家畜化すべきです」
狼男「その通り!」
ドッペルゲンガー「やつらには利用価値がある!」
魔王「わが国としては、財政と経済の健全化こそが優先事項。大軍を挙兵して向こうの大陸に攻め入るのは、やはり苦しい……」
暗黒竜王「くっ……」
魔王「しかし人間を放置すれば、やがて魔族にとって深刻な脅威になるであろう」
吸血男爵「……まあ、そうでしょうね」
魔王「とはいえ、『副都』と呼ばれる都市が壊滅して以来、人間たちの侵略は沈静化している。つい数ヶ月前にオークの町が勇者に襲われたが、その後、勇者の蛮行は報告されていない」
暗黒竜王「勇者はきっと、次のテロの計画を練っているのだ」
吸血男爵「対策は欠かせません……」
魔王「そこで諸君らに提案したい。人間たちの侵略行為が沈静化している今は、戦力を温存し、わが国の財政再建に取り組む……」
吸血男爵「ご英断だと存じます」
暗黒竜王「致し方なし、だな」
魔王「……しかし、もしも人間が再びわが国を侵略し、戦火を交えるつもりなら、今度こそ全力でやつらの国を滅ぼす」
暗黒竜王「やつらが侵略のそぶりだけでも見せたら、先手を打つべきかと」
吸血男爵「我が国民に被害が出てからでは遅いですからね」
魔王「さよう。もしも人間たちがこの国への侵略を企てるなら、それがやつらの最後の時だ! 魔族の総力をあげてやつらの国を叩き潰し、徹底的な死と隷属を与えてやるのだ!!」
男爵・竜王「「異議なし!」」
議員たち「異議なし!」「異議なし!」
魔王「ふふふ、人間どもめ。せいぜい賢明な判断をするのだな……」