ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その㉔

原作:Rootport
イラスト:こちも
提供:デンシバーズ
ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その㉔

幻冬舎コミックス運営のWEBマンガ雑誌「デンシバーズ」と幻冬舎ゴールドオンラインによる特別コラボ企画。デンシバーズの好評連載『女騎士、経理になる。』の原作小説で、2016年6月24日に発売された単行本『女騎士、経理になる。①鋳造された自由』のプロローグと第1章、第2章、第3章を無料公開します。今回は第3章「リテラシー」その㉔です。

▼魔国・特別議会

 

幽霊議長「……議論は尽くされた! これより決議に移る!」

 

魔王「議員一同のご意見、大統領として興味深く拝聴した。この議案は、それぞれの立場を尊重したものになっていると自負している」

 

吸血男爵「さすがは魔王さま!」
暗黒竜王「そのご慧智には恐れ入るばかり……」

 

魔王「まず竜族を始め、人間との関わりが薄い種族においては、人間を絶滅させたいという意見が強かった」

 

暗黒竜王「いかにも! 人間はこの大地を蝕む害虫そのもの。1匹残らず駆除すべきだ」

 

スライム王「ぐしゅ! ぐしゅぐしゅ!(そうだそうだ!)」
アークデーモン「この地は魔族のものだ!」

 

魔王「その一方で、吸血鬼や狼男など、人間との関わりが深い種族は、人間の絶滅には反対だった……」

 

吸血男爵「さよう。人間は栄養価の高い食料であり、奴隷として使うことも可能です。絶滅させるのではなく、家畜化すべきです」

 

狼男「その通り!」
ドッペルゲンガー「やつらには利用価値がある!」

 

魔王「わが国としては、財政と経済の健全化こそが優先事項。大軍を挙兵して向こうの大陸に攻め入るのは、やはり苦しい……」

 

暗黒竜王「くっ……」

 

魔王「しかし人間を放置すれば、やがて魔族にとって深刻な脅威になるであろう」
吸血男爵「……まあ、そうでしょうね」

 

魔王「とはいえ、『副都』と呼ばれる都市が壊滅して以来、人間たちの侵略は沈静化している。つい数ヶ月前にオークの町が勇者に襲われたが、その後、勇者の蛮行は報告されていない」

 

暗黒竜王「勇者はきっと、次のテロの計画を練っているのだ」
吸血男爵「対策は欠かせません……」

 

魔王「そこで諸君らに提案したい。人間たちの侵略行為が沈静化している今は、戦力を温存し、わが国の財政再建に取り組む……」

 

吸血男爵「ご英断だと存じます」
暗黒竜王「致し方なし、だな」

 

魔王「……しかし、もしも人間が再びわが国を侵略し、戦火を交えるつもりなら、今度こそ全力でやつらの国を滅ぼす」

 

暗黒竜王「やつらが侵略のそぶりだけでも見せたら、先手を打つべきかと」
吸血男爵「我が国民に被害が出てからでは遅いですからね」

 

魔王「さよう。もしも人間たちがこの国への侵略を企てるなら、それがやつらの最後の時だ! 魔族の総力をあげてやつらの国を叩き潰し、徹底的な死と隷属を与えてやるのだ!!」

 

男爵・竜王「「異議なし!」」
議員たち「異議なし!」「異議なし!」

 

魔王「ふふふ、人間どもめ。せいぜい賢明な判断をするのだな……」

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

原作:Rootport,イラスト:こちも

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