▼田舎領主の館・庭園
田舎領主「ううむ、昼間から飲む酒は格別じゃのぉ」
ぐびぐびっ
田舎領主「しかし、それにしても……昨夜の者どもはいい女じゃった。あやつらに注がせる酒はさぞかし美味じゃろうな~」
ぷはぁーっ
田舎領主「まあよい。月末にはあのそばかす娘が屋敷に来る。どう味わってやろうかのぉ」
ぐびぐびっ
田舎領主「まったく、農奴とは愚かな生き物じゃ。あの手鏡が最初から割れていたとも気づかず、わがはいの言葉を鵜呑みにするとは……。月末が楽しみじゃ! ほほほ!」
秘書「おや、月末に何かいいことでもあるのですか?」
田舎領主「!」
秘書「奇遇ですね、私も月末を楽しみにしているんですよ。……今月末は、領主様にお貸しした長期融資20万Gの返済日です。お金のご用意は進んでいますか?」
田舎領主「貴様は……帝都銀行の!?」
秘書「返済できないようであれば、担保として領主様の土地の一部を頂戴するお約束になっています」
田舎領主「出て行け! ここはわがはいの私邸じゃ!」
秘書「おっと失礼。たしかに今はまだあなたの私邸でしたね」
田舎領主「今はまだ、じゃと……?」
秘書「ええ。この屋敷が担保に入るのも時間の問題でしょう? あなたが領主の地位を継承してから、あなたの所有地は小さくなる一方ではありませんか」
田舎領主「土地を担保に取る貴様たちのせいじゃ!」
秘書「担保も無しにカネを貸すバカはいませんよ。土地を取られたくなければ、きちんとカネを返せばいい。あなたはカネを返す能力がないから、銀行に土地を取られてしまうのですよ」
田舎領主「わがはいを無能と呼ぶのか! 人間国に血税を納めているこのわがはいを!」
秘書「その税金は、もとを正せば私たちが貸したカネでしょう?」
田舎領主「うぬぅ~! 平民のくせに生意気な口を叩くでない! わがはいにカネが無いのは、農奴たちが怠惰なせいじゃ! やつらがもっと仕事に精を出せば……」
秘書「いいですねえ、貴族制というものは。何の才能もない人間でも、『生まれ』だけで偉そうにできる」
田舎領主「な、何の才能もない、じゃと……?」
秘書「そうでしょう? あなたにはカネも無いし、商才も無い。武芸の才も、戦線に出る勇気も無いから、武勲を上げることもできない。……あなたにあるのは、先祖から譲り受けたこの土地だけではありませんか」
田舎領主「貴様ぁ! 黙って聞いていれば……不敬罪で訴えてやる! 貴様など縛り首じゃ!」
秘書「訴えたければご自由に。ですが、私個人はあなたよりも多額の税を納めています。人間国政府の裁判官たちがどちらに味方をするか、熟考してみては?」
田舎領主「~~~!!」
秘書「では、私はこれで。月末を楽しみにしていますよ」
田舎領主「くそぉ~!!」
パリンッ