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ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その⑯

幻冬舎コミックス運営のWEBマンガ雑誌「デンシバーズ」と幻冬舎ゴールドオンラインによる特別コラボ企画。デンシバーズの好評連載『女騎士、経理になる。』の原作小説で、2016年6月24日に発売された単行本『女騎士、経理になる。①鋳造された自由』のプロローグと第1章、第2章、第3章を無料公開します。今回は第3章「リテラシー」その⑯です。

▼工房・事務室

 

ドワーフ「これが帳簿だよ」
黒エルフ「前に教えられた通り、ちゃんと複式簿記でつけているようね」

 

ドワーフ「きちんと帳簿をつけることが、おたくの銀行がカネを貸すときの条件だろう? 昔はもっと簡単にカネを貸してくれたのに……」

 

女騎士「最近決めた方針なのだ」

 

ぺらっ

 

黒エルフ「まずは……先々月にうちの銀行から150万Gを借りたときの仕訳がこれね」

 

 

司祭補「BSの現金と借入金を増やす仕訳ですわね」

 

女騎士「ふむ、これは大丈夫そうだな」

黒エルフ「ええ。正しい仕訳になっているわ」

 

ドワーフ「で、その150万Gでわしは活版印刷機を完成させた。そのときの仕訳がこれだ」

 

 

女騎士「現金を減らして製造原価を計上しているが……」
黒エルフ「さっそく間違っているわね」

 

司祭補「印刷機を作るのにかかったお金は、本の製造原価になりませんの?」

 

黒エルフ「印刷機のような『機械装置』とか、馬車のような『車両運搬具』とか、それから『建物』とか……。こういうものを『有形固定資産』と呼ぶわ」

 

女騎士「固定資産を取得したときは、取得にかかった金額をPLの『費用』に計上してはダメなのだ」

 

司祭補「あら、なぜかしらぁ?」

 

黒エルフ「もしも固定資産の取得価額を費用に計上したら、その月は大幅な赤字になるわね」

 

ドワーフ「たしかに、わしの帳簿では、先々月は大赤字だった」

 

黒エルフ「その一方で、翌月以降は紙やインク代だけが費用になって、利益が多めに計算される」

 

カキカキ……

 

黒エルフ「要するに、こういうことになるわ。150万Gの印刷機で5千冊を刷れるとすれば、1冊あたりの原価は300Gになる……そういう話だったわよね。だけど、今の帳簿の付け方では、この『1冊当たり300G』の原価が正しく反映されないのよ」

 

 

司祭補「利益を正しく計算できないということですわね」
黒エルフ「そういうこと」

 

カキカキ……

 

黒エルフ「正しくは、こういう仕訳を切るべきね」

 

 

女騎士「現金を減らして、代わりに固定資産の『機械装置』を計上するのだ」

 

ドワーフ「このやり方で利益を正しく計算できるのかい?」
黒エルフ「もちろんよ」

 

カキカキ……

 

黒エルフ「たとえば本を10冊印刷したときは、こういう仕訳を切るわ」

 

 

司祭補「使った分だけBSの『機械装置』を減らして、PLの費用に計上するのですわね」
黒エルフ「固定資産を使ったぶんだけ費用にすることを、『減価償却』と呼ぶわ」

 

カキカキ……

 

黒エルフ「この方法なら、固定資産を取得した月だけ大幅な赤字になったりしないわ。さらに、翌月以降にはより正確な利益を計算できる」

 

 

ドワーフ「なるほど……」

 

女騎士「勉強になったのだ……」
黒エルフ「あんたは知っておけよ簿記2級」

 

司祭補「あらあら、まあまあ」

連載特別コラボ特別企画――『デンシバーズ』発の異色人気ノベルを無料公開!

 

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

原作:Rootport,イラスト:こちも

幻冬舎コミックス

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