今回は、賃貸借契約の「合意解約」の際に必要となる、書面の作成方法を見ていきます。※本連載は、弁護士法人サン総合法律事務所代表・パートナーの清水俊順弁護士、パートナーの高村至弁護士による編書、『借地借家事件処理マニュアル』(新日本法規)より一部を抜粋し、賃貸借契約の解除・解約の進め方を、事例を交えて分かりやすく説明します。

書面化の際は、精算方法・建物の処理方法なども併記

(1) 合意内容が書面にされているか確認する

 

賃借人との合意については、一応口頭でも足りますが、実務上は合意の存在を証拠化するという意味で、書面化することが必須であると考えるべきです。また、真の合意がなされたことを担保する意味でも、期限や精算方法、借地上の建物の処理、原状回復義務の範囲等の諸条件についても、解約合意と同時に書面化しておく必要があります。

 

(2) 合意解約書を作成する

 

既に弁護士のもとに相談に来る前に合意内容が書面化されている場合は、合意解約の意思確認、期限、精算等の諸条件について定めがなされているかを確認し、内容が不十分な場合は合意解約書を改めて作成することも考えるべきでしょう。

 

もっとも、書面化を改めて求めることで、合意解約の効力自体を賃借人が争ってくることが考えられる場合には、慎重な対応が必要なこともあります。

 

なお、賃貸人から、立退料の提供を申し出て解約を合意する例として、以下の図表をご参照ください。

 

[図表]合意解約書

解約合意後も賃借人が退去しないなら、法的措置を検討

合意解約の場合は、賃借人との間で退去を前提とした話合いがなされ合意に至りますので、合意後は賃借人が合意に従って任意に退去することになるのが通常と思われます。

 

借地の場合は、借地上の建物の処理が残ります。賃貸人(地主)が建物を取得する場合、建物の所有権移転登記の手続を別途とることになります。建物を取り壊す場合は、費用を賃貸人(地主)・賃借人(借地人)のどちらが負担するかを合意で定めておくことになりますが、建物の登記名義を賃貸人(地主)に移さないまま取り壊す場合は、取壊し後の滅失登記をするのに建物所有者である賃借人(借地人)の協力が必要となります。

 

解約の合意がなされたにもかかわらず、賃借人が期限までに退去しない場合は、明渡請求訴訟の提起などを検討することになります。

借地借家事件処理マニュアル

借地借家事件処理マニュアル

清水 俊順,高村 至

新日本法規

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