今回は、国際貿易における「自由貿易」と「保護貿易」の違いを見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

競争力のない産業にとって自由貿易は死活問題

国際貿易のあり方は基本的には自由貿易保護貿易の二つです。自由貿易とは、外国との貿易に何ら制限を設けることなく自由に貿易することをいいます。

 

一方、保護貿易とは外国との貿易に国が介入し、自国の産業を保護・育成することをいいます。保護の方法には、関税、輸入数量制限(一定数量以上の輸入を禁止する)、非関税障壁(輸入する際の手続きや検査の基準を厳しくする)など、さまざまな方法があります。

 

もちろん、自由貿易と保護貿易のあいだには、保護の程度によってさまざまなバリエーションがあります(図表)。

 

[図表]自由貿易と保護貿易

 

貿易は各国の国益と国益が激しくぶつかり合います。外国から自由に輸入することを認めれば、自国の産業が競争に負けてつぶされてしまうかもしれません。

 

競争力のない産業にとって自由貿易は死活問題です。過去には「貿易戦争」が「本物の戦争」に発展したこともあります。

国民にとって望ましいのは…?

自由貿易と保護貿易のどちらが国民にとって望ましいのでしょうか。この問題に初めて経済学的な解答を与えたのが、イギリスのD・リカードです。彼は1817年に『経済学及び課税の原理』を発表し、そのなかで比較生産費説と呼ばれる理論を展開し「貿易は原則として自由貿易であるべきだ」ということを論証しました。

 

次回以降、少し面倒な議論が続きますが、リカードが使った数値例をもとに比較生産費説について説明します。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

経済学の理論や数字を聞いても、それが何を意味するのか、そもそも何のための理論なのかがよくわからないという経験はありませんか? 本書は理論や数字の意味をしっかり理解できるよう、実際の経済状況や経済政策と結びつけ…

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