司祭補「……消えた方の名前は以上です。思いつく限りでは」
黒エルフ「ありがと。まったく、参ったわね……」
女騎士「いったいどうしたのだ?」
黒エルフ「今の名前を聞いてピンと来たでしょう?」
銀行家「もちろんです」
幼メイド「もちろんなのです!」
女騎士「わ、私にも分かるように説明してくれ!」
黒エルフ「あんたも知ってのとおり、最近この銀行では取引先からの全額返済が増えているわ」
女騎士「うむ。借りたカネをすべて返したいという問い合わせだな。それが……?」
黒エルフ「今あがった名前は、みんな全額返済した人たちの名前と一致しているのよ」
女騎士「つ、つまり……?」
司祭補「消えた方々は、どなたもお金を全額この銀行に返してから消息を絶っている……。そういうことですわね?」
黒エルフ「ええ。まだ確証はないけど、思った以上にマズい状況になっているのかも」
女騎士「分からん。なぜその人たちは消える必要があったのだ? カネの返済と関係あるのか?」
黒エルフ「答えを急ぐことはできないけど、調べてみたほうがよさそうね」
女騎士「よ、よし。私も力を貸そう」
黒エルフ「足手まといにならないでよね」
司祭補「わたしもご一緒しますわぁ」
黒エルフ「教会はいいの?」
司祭補「侍女さんが何とかしてくれます♪」
一同(いいのか、それで…)
幼メイド「はっ! そういえばだんなさま、そろそろ馬車が着くころあいでは?」
銀行家「グーテンベルク様からの金貨を載せた馬車ですね」
女騎士「グーテンベルク?」
銀行家「丘陵地帯の寒村で暮らすドワーフの技工です。この方も全額返済を申し込まれて、そのお金がもうすぐ届くのです」
女騎士「丘陵地帯の寒村なら、のんびり行っても1日で到着できるな」
黒エルフ「ちょうどいいわ。そのグーテンベルクとかいうドワーフに話を聞きましょう」
司祭補「ドワーフは信心深い種族。わたしがご一緒すれば何かのお役に立てると思いますわ」
銀行家「ぜひ町人消失の謎を明かしてください!」
幼メイド「ではさっそく、ごしゅったつの準備をいたしますぅ~」
銀行家「たまには私も手伝いましょう。3人の荷造りくらいでしたら、私にも──」
黒エルフ「待ちなさい」ガシッ
銀行家「!」
黒エルフ「銀行家さん、あなたにはちょっとお話があるんだけど……?」ニコニコ
銀行家「ハ、ハハ……何でしょう?」
黒エルフ「この本、いったいいくらしたの!?」
銀行家「いえいえ、たいした金額では……」
黒エルフ「具体的な数字で答えなさい! でないと番頭さんを呼ぶわよ!」
銀行家「そ、それは困ります!」
黒エルフ「コケモモだかフトモモだか知らないけど、ムダ遣いは許さないわ!!」
銀行家「ひぃ~!