中国人の「三つの自分流」には要注意
Q.「信頼できる中国人」と「危ない中国人」を見極める方法を教えてください。(3)会社のために行動できるかをチェックするには?
A.三つ目は「自分流チェック」という方法。会社やチームのために行動ができるかどうかや、就業意識や会社への忠誠心を確認できます。
前々回、前回に引き続き、三つ目の方法は「自分流チェック」です。
たとえば社内で仕事の指示を与えるとき、「自分で考えてやってみて」という指示の仕方は注意が必要です。日本なら社員の自主性を伸ばすとか、問題の発見力をトレーニングするとか、自分で考えさせて必要に応じてアドバイスを行うことがあります。「気付き」を与えるための手段でもあるわけですが、中国では期待した効果が得られないケースもあるようです。
「自分で考えてみて」と言うと、自分にとって都合がいいように考える中国人が少なからずいます。チームのためや仲間のためではなく、「自分のため」と考える中国人です。会社のため、組織のためという発想より、自分自身のためという点を優先させてしまうのが「自分流」です。
自分のメリットしか考えない自分流、事前の連絡や相談がなく結果だけを知らせてくる自分流、たとえばトラブルがあったときに対応策ではなく言い訳ばかりを言ってくる自分流、この三つの自分流に要注意です。
仕事の指示や課題を与えたときに、会社のため、組織のため、チームのため、仲間のためと考えるか、それとも自分のためと考えるか、どちらの方向に向かうかをチェックするのが「自分流チェック」です。
会社の方針やチームの目標よりも自分のためを優先させるケースです。与えられた役割の責任を果たすこと、さらに責任を果たした成果に見合う正当な報酬を要求することを「当たり前」と考えるのが中華圏のビジネスパーソンの特徴です。一方、会社のために一致団結して、みんなで協力し合って働くこと、チームのために時には私心を捨てて尽くすこと、それが社員の役割であり、会社のため、組織のため、チームのため、仲間のため、一生懸命働くことが当たり前と考えるのが日本人です。
極論を言うと、中国人は、会社のためと考えるのは経営者の仕事であり、チームのためと考えるのは現場のマネジャーの役割と考えます。指示のあった仕事の内容をこなし、与えられた責任を果たすことが自分の役割と考えるのです。
「自分流チェック」では自分のメリットではなく、会社やチームのために考えた行動ができるか、ここがポイントです。
異文化理解において大切なポイントとは?
二つ目のチェックポイントは自分流で事を進めるとき、事前の連絡や相談があるかどうかです。事前にメールや電話での連絡もなし、詳しい説明もなし、もちろん相談もなしに結果だけを知らせてくるケースは「自分流チェック」のマイナス評価です。
三つ目のチェックポイントはトラブルがあったときに善後策があるかどうかです。連絡や相談がないだけでなく、報告の内容もあいまいで、対応策ではなく言い訳ばかりするケースはやはり「自分流チェック」のマイナス評価です。
「自分流チェック」をすると相手の仕事に取り組む姿勢、就業意識や会社への忠誠心がチェックできます。これは社内だけではなく社外でも同様です。取引先企業の担当者を見極める場合も「自分流チェック」をしてみることをお勧めします。会社のことを顧みず、自分のためを最優先で考えているような担当者であれば、取引先のビジネスパートナーとして要注意です。
中国人に対して「言ったことしかやらない」「自主性に欠ける」「自分のことしか考えない」とマイナスイメージを持つ日本人も少なくありません。日本人が感じるギャップです。しかし、それは多くのケースで日本人の誤解です。
日本側の指示の内容が適切だったか、自主性を伸ばすにはどんな指示をするべきだったか、そもそも十分な権限や適切な目標を与えているか、それを正当に評価する手段や必要にして十分な報酬を与えているか、こうした点についても再検討すべきです(詳しくはQ20「社員管理のドーナツ」を参照※書籍をご参照ください)。
日本人から見ると「会社に対する忠誠心が低い」という点に自分たちとは違うギャップを感じます。しかし、逆に「会社や組織に依存している」「自己責任で自分自身のリスク管理ができない」、こんなふうに日本人を見ている中国人もいます。相手がどんな点にギャップを感じているか、そこに目を向けることも異文化理解では大切なポイントです。