「来てくれるのはうれしい。でも…」母が打ち明けた本当の理由
健太さんは、母が帰省を負担に感じていたことを初めて知りました。
芳江さんによると、家族が来る数日前から布団を干し、シーツを洗い、食材を買いそろえていたそうです。
滞在中は7人分の食事を用意し、洗濯や片づけに追われます。家族が帰った後も、使った寝具を片づけるのに丸一日かかることがありました。
「前は平気だったのよ。でも最近は、みんなが帰った後、2日くらい疲れが抜けなくて」
母の言葉を聞き、健太さんは思い返しました。
自分たちは実家でくつろいでいるつもりでも、母は朝から晩まで動いていました。美咲さんが手伝おうとしても、芳江さんが「座っていて」と断ることも多かったのです。
「言ってくれればよかったのに」
そう口にすると、芳江さんは苦笑いしました。
「せっかく来てくれるのに、そんなこと言いにくいじゃない。孫たちには、また来たいって思ってほしいし」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上の人が日常生活で家族や知人から頼られる内容として、「家事」を挙げた割合は35.9%、「子や孫の世話」は26.0%でした。
また、同調査では、子どもとの同居や近居を希望する人のうち、27.0%がそのメリットとして「子や孫の世話ができる」ことを挙げています。孫との関わりを望む高齢者がいる一方、具体的にどの程度の世話を担えるかは、それぞれの生活状況によって異なります。
帰宅後、健太さんは妻と帰省の仕方について話し合いました。
美咲さんも、義母が台所仕事を一人で抱え込んでいることを気にしていたといいます。
「私も何度か手伝おうとしたんだけど、お義母さんが大丈夫って言うから。それ以上はなかなか言えなくて」
次の年末、健太さん一家は実家への宿泊を1泊に減らしました。夕食は近くの飲食店で取り、翌日の昼食も惣菜を買って済ませることに。布団の準備を減らすため、今後は近隣のホテルに泊まることも検討しています。
芳江さんは「そんなに気を使わなくていいのに」と笑いましたが、帰省後には「今回はずいぶん楽だったよ」と電話をくれたそうです。
「子どもを連れて帰るだけで親孝行をしているつもりでした。母がどれだけ準備してくれているか、考えていなかったんです」
健太さんは今後、帰省の予定を決める前に、母が無理なく迎えられる日数や過ごし方を確認するつもりだといいます。
子どもや孫の成長に合わせて、家族の集まり方は変わっていきます。同じように、迎える親の体力や生活のペースも年々変化するものです。帰省のたびに食事や宿泊の負担を確かめ、必要に応じて外食や宿泊施設を利用するなど、家族それぞれが無理なく過ごせる方法を考えていくことが大切でしょう。
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