「今まで出してくれてたから」息子の一言で分かったズレ
夫婦が気になったのは、お金がなくなることだけではありませんでした。
貯蓄は3,600万円あります。1ヵ月、息子一家が滞在したからといって、直ちに生活に困るわけではありません。
それでも、正弘さんには引っかかるものがありました。
「息子は一度も『食費を入れようか』と言わないんです。こっちから請求するほどでもないと思う一方、当然みたいになっているのも違う気がして」
滞在3週目、正弘さんは健太さんに話をしました。
「今回は長いから、食費くらい少し出してくれないか」
健太さんは意外そうな顔をしました。
「え、そうなの?」
「そうなのって……4人で1ヵ月近くいるんだから」
すると健太さんは、こう答えました。
「今まで帰ってきたときは、父さんたちが全部出してくれてたから」
その言葉で、正弘さんにも思い当たることがありました。
正月に帰省すれば、食事代は両親持ち。孫と外食すれば、正弘さんが会計をする。旅行へ行ったときも、宿泊費の一部を出したことがあります。息子一家にとっては、それが「実家に帰ったときのいつもの形」になっていたのです。
ただ、夫婦の生活はすでに現役時代とは違います。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の月平均実収入は25万4,395円、可処分所得は22万1,544円です。一方、消費支出は26万3,979円で、税・社会保険料などの非消費支出も含めると、収入との差額は月4万2,434円となっています。
正弘さん夫婦は平均より年金収入が多く、貯蓄もあります。それでも、現役時代のように毎月給与が増えていくわけではありません。
「出せないわけじゃない。でも、出せるから全部出す、というのも違うと思ったんです」
話し合った結果、その後の食料品は健太さん夫婦も買うことになりました。外食やレジャーについても、毎回両親が支払うのではなく、その都度相談することにします。
健太さんも、父から言われて初めて「長く泊まるなら、いつもの帰省とは違うよね」と納得したそうです。
翌年も、孫たちは夏休みに遊びに来ました。ただし、滞在は2週間。来る前に健太さんから「食費はこっちも出すから」と言われました。
和美さんは、そのほうが気持ちよく迎えられたといいます。
普段は別々に暮らしている家族が一時的に同じ家で生活すれば、食費や光熱費だけでなく、家事の量や生活リズムも変わります。
数日の帰省なら「親が出す」で済んでいた家庭でも、数週間、1ヵ月となれば事情は違います。誰がどこまで負担するのかを話すことは、家族にお金を請求することと同じではありません。長く一緒に過ごすからこそ、互いに無理なく過ごせる形を事前に確認しておくことも大切でしょう。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

