(※写真はイメージです/PIXTA)

老後に備えて貯蓄をすることは大切です。一方、仕事を辞めて年金中心の生活になると、それまで積み上げてきた資産を「使う」段階に入る人もいます。十分な蓄えがあっても、残高が減ることへの不安から、必要以上に支出を抑えてしまうケースもあるでしょう。

4,000万円あっても不安…夫婦で決めた「使うためのお金」

洋子さんはその夜、久しぶりに夫婦の資産を確認しました。約4,000万円。自分でも十分な額だと思います。

 

それでも、「旅行で20万円使えば3,980万円になる」と考えると、不安になるのです。

 

「増えるのはうれしいのに、減るのは金額以上に嫌だったんです。自分でも変だと思うんですけどね」

 

高齢者の金融資産には大きな個人差があります。

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の金融資産は平均1,769万円、中央値1,000万円でした。一方、「今後の生活のために必要」と考える金融資産は平均2,648万円、中央値2,000万円です。さらに、現在の貯蓄について「十分だと思う」は5.9%、「最低限はあると思う」は30.8%で、両者を合わせても36.7%でした。

 

洋子さんの4,000万円はこうした平均を上回っています。ただ、平均以上の資産があることと、本人が安心して使えることは別でした。

 

そこで夫婦は、今後必要になりそうな支出を一度書き出しました。

 

毎月の生活費だけではありません。住宅設備の修繕、医療や介護、家電の買い替えなど、まとまった支出も想定します。

 

すべてを正確に予測することはできません。それでも、「何となく怖いから使わない」という状態から、「何に備えて、どのくらい残したいのか」を考えるきっかけにはなりました。

 

そして夫婦は、年間の予算の中に「楽しむためのお金」を設けることにしました。

 

最初に使ったのは、壊れるまで先延ばしにしていた冷蔵庫です。その後、2泊3日の旅行にも出かけました。

 

洋子さんは帰宅後、口座の残高を確認したそうです。

 

「もちろん減っていました。でも、それを見て初めて、『使ったんだから減るのは当たり前なんだ』と思えたんです」

 

だからといって、急に浪費するようになったわけではありません。スーパーでは今でも価格を比較しますし、必要のないものは買いません。

 

変わったのは、必要な支出まで「もったいない」と先送りしなくなったことでした。

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、老後の備えとして今後必要だと考えるものは、「健康に関する備え」が80.7%で最多。「終活関係の準備」が38.1%、「住まいに関する備え」が25.5%、「資産形成(貯蓄・投資)など」は24.2%でした。

 

老後資金について、いくら残せば絶対に安心という金額はありません。生活費や住居、健康状態、家族構成によって必要額は変わり、将来の医療・介護費などを完全に予測することも困難です。

 

一方、資産を残すことだけを目的にすれば、現在の生活に使える時間とのバランスを見失うこともあります。まず必要な生活費や将来想定される支出を整理し、そのうえで「残すお金」と「今使えるお金」を考える。貯蓄額だけではなく、何のために貯め、どう使っていくのかまで考えることも、老後資金を管理するうえで大切な視点でしょう。

 

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