企業会計の常識は「発生主義会計」
これまで何度か触れたように、企業会計では、売上の計上時期をある程度コントロールすることができます。
経理に詳しくない人は、売上というと、銀行の口座に入ってくる日付など、入金された日を「売上」として計上するのが普通だと思ってしまいがちです。しかし、そうした売上計上の考え方は、「現金主義会計」と呼ばれ、企業決算では原則的には認められていません。
売掛金などがある場合は、現金が入ってこなくても売上に計上することがほとんどです。これは、企業会計の常識が「発生主義会計」をとっているからです。発生主義会計というのは、たとえば商品を出荷した時点で売上を計上するなど、その企業の特性に合わせて、あらかじめ定めたルールによって利益を計上する方法です。
言い方を変えれば、発生主義会計を賢く使って節税することができるわけです。
企業会計においては、出荷基準以外にも、使用収益開始基準、検針日基準、工事進行基準・・・という具合にさまざまな「基準」が設定されます。この基準を賢く使って、当期の売上を翌期の売上に計上を遅らせる(繰り延べる)といった方法が取れるのです。売上の操作はダメですが、企業の実態にあった「基準」を作って、無駄に税金を払わないように工夫することはできるのです。
こうした方法を使えば、経費の割増しのために多額の現金を使う必要がありません。これが、「お金のかからない節税法」です。
節税には「家事関連費」との区別が大切
いままで経費として計上してこなかった社長や役員の自宅の経費。実質的にお金をかけずにできる節税法ですが、経費として計上できるのでしょうか。
お金がかからない節税法は、税金の知識がないと思いつかないものが多くあるのも事実です。売上も確定した、経費への計上も通常の方法ではこれ以上は難しい、資金繰りにも不安がある。そんな難問に直面したときに経営者の見方になるのが、お金がかからない節税法です。お金をかけて経費を増やす方法もありますが、これはすぐに限界がきます。設備投資や研修旅行も、そうそう長続きできるものではありません。
いわば、「経費という概念の拡大」と考えればわかりやすいかもしれません。
社長となれば、自宅に帰ってからも仕事をするケースが増えてきます。自宅でパソコンを開いたり、電話をすれば、それらは当然のように「業務」になります。
自宅には家族が住んでいるわけですから、全額必要経費にはなりませんが、たとえば、賃貸住宅であれば書斎部分の床面積分の「家賃」は必要経費として計上できるかもしれません。持ち家だったら、床面積分の住宅ローンの一部、あるいは固定資産税の一部なども、業務用として必要経費に計上できるかもしれません。
むろん、電気代や電話代も、水道光熱費や通信費として一部を必要経費として計上することができるはずです。お金もかからず、かつ経費が増えて利益が減少し、税金を減らすことができます。