(※写真はイメージです/PIXTA)

親の死後、実家に残された通帳の行方がわからない……。そんな「よくある不安」が、想像を絶する身内の相続トラブルに発展することがあります。長男の暴力から逃れてきた母を看取った53歳の妹。手探りで相続税申告を済ませた2年後、突然やってきた税務調査によって「まさかの真実」を突きつけられます。実家に居座る兄が、〈母の資産1億円〉を勝手に引き出していたのです。なぜ税務署に使い込みがバレたのか。そして泥沼の訴訟へ発展した兄妹の末路とは。本記事では、親の財産と家族を守るためのルールを、税理士の根津拓矢氏が解説します。

申告から2年後…税務調査で発覚した「1億円の使い込み」

ヨシエさんが実家を離れた後も出金は続き、タロウさん名義の口座への振込履歴も確認されました。

 

なんと、母の預金約1億円の大半を、タロウさんが勝手に利用していたのです。

 

「嘘でしょ、これっぽっち…!? ほとんど残ってないじゃない……」

 

この事実の発覚により、単なる遺産分割から、タロウさんに対する「不当利得返還請求」へと発展しました。

 

引き出されたお金は、タロウさんへの「預け金(債権)」として相続財産に計上されることになりました。タロウさんが不当に得たお金も遺産分割の対象となり、相続税の課税対象になるためです。

 

その後、追加財産の判明や不当利得の整理、遺産分割協議の成立を経て、最終的には相続税申告のやり直し(修正申告)に至りました。

 

「血の繋がった兄を訴えることになるなんて……。母を苦しめただけでなく、死んだ後までこんな目に遭わせるのかと、怒りを通り越して絶望しかありません」

隠蔽はバレる?ATM出金から不正を見抜く「税務調査のリアル」

今回の兄妹の事例のように、別々の税理士へ申告を依頼し、申告内容が異なると税務調査に入られる可能性は高まります。

 

また、強調すべきは、税務調査で最も指摘されやすいのが「現預金」である点です。預金の出金や資金移動は記録が残りますし、調査官は職権により銀行へ調査対象関係者の入出金情報の開示を求めることができるため、誤魔化すことはできません。

 

本件調査では、

 

・ATM出金は決まって実家近くの銀行

・被相続人不在後も続く出金

・長男口座への預金振込

 

といった複数の事実が積み重なり、資金の流れが立体的に把握されます。

 

重要なのは、税務署はすでに相当程度の情報を把握したうえで調査に臨むという点です。つまり、「調査でバレる」のではなく、「すでに把握されている事実を確認しにくる」と考えるべきでしょう。

 

また、本件のように資料収集が弁護士経由で行うケースや、相続人が高齢または健康状況が悪いケースでは、税務調査も長期化しやすくなります。

 

通常、相続税の税務調査は数ヵ月から長くても1年未満で終わるのが一般的です。それにもかかわらず、本件のように3年に及ぶ調査は極めて異例であり、実務上もかなりレアなケースといえます。

 

さらに、こうした資金の扱いは税務リスクも伴います。仮に仮装・隠蔽と判断されれば、重加算税の対象となり、税負担は大きく膨らみます。

次ページ相続の泥沼化を防ぐために重要な「財産情報の共有」

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