(※写真はイメージです/PIXTA)

相続は、財産の額だけでなく「何を引き継ぐか」によって負担の大きさが変わります。特に不動産中心の相続では、評価額と手元資金の差が問題となり、納税資金の確保に苦慮するケースも少なくありません。国税庁の資料でも、相続財産に占める土地の割合は大きく、資産構成によっては相続後に資金繰りの問題が顕在化することが示されています。

「資産はあるのに払えない」不動産相続で直面した納税資金の壁

「相続って、もっと後の話だと思っていたんです」

 

そう話すのは、地方都市で会社員として働く長男の健一さん(仮名・47歳)です。父・正明さん(仮名)は生前、賃貸アパートと駐車場付きの土地を所有しており、周囲からは「不動産を持っているから老後も安心だろう」と見られていました。家族も、父が相続のことをある程度整理しているものと思っていたといいます。

 

しかし、正明さんが急逝した後、健一さんは現実の重さを知ることになります。遺産の中心は土地と収益物件で、預貯金はそれほど多くありませんでした。

 

「不動産を相続すること自体は、むしろありがたい話だと思っていました。でも、すぐに“納税資金はどうするのか”という話になって、頭が真っ白になりました」

 

国税庁『令和6年分 相続税の申告事績の概要』によると、相続財産の内訳では土地の割合が大きく、資産が不動産に偏るケースも少なくありません。そのため、評価額上は十分な資産があっても、納税に充てられる現金が不足する状況に直面することがあります。

 

健一さんも、まさに同じ問題に直面しました。父名義の賃貸アパートと土地を相続したことで、評価額としては相応の資産を受け取った形になりますが、相続税は原則として現金での納付が求められます。不動産はすぐに現金化できるわけではないため、「資産はあるのに納税資金が足りない」という状況に直面しました。

 

健一さんは税理士に相談し、初めて相続税の計算の仕組みを知ったといいます。基礎控除を超える部分に課税されること、法定相続人の数で基礎控除額が変わること、さらに不動産にも相続税評価額があることを知り、「父が財産を残してくれた」という感覚だけでは済まないと痛感したそうです。

 

さらに誤算だったのは、相続したアパートが“安定収入を生む資産”としてすぐ機能するとは限らなかったことです。築年数が進んでいたため、修繕の必要があり、空室も出ていました。家賃収入はあるものの、管理費や修繕費、固定資産税などを差し引くと、納税資金を短期間で準備できるほどの余裕はありませんでした。

 

「父の代では何とか回っていたのかもしれません。でも、相続した側からすると、収入が入る前に支出の話ばかり出てくるんです」

 

一定の要件を満たせば、賃貸アパートなど貸付事業に用いられている土地については、「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」を適用し、評価額を最大50%減額できる場合があります(適用上限200㎡)。

 

駐車場についても、貸付事業として一定の要件を満たす場合には対象となることがあります。

 

ただし、この特例は自動的に適用されるものではなく、継続要件や申告が必要です。生前にその前提が整理されていなければ、相続人側が短期間で制度理解と手続きを迫られることになります。

 

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