(※写真はイメージです/PIXTA)

退職時にまとまった資産があり、年金収入も平均以上――そうした条件がそろえば、多くの人が「老後は安泰」と考えがちです。しかし実際には、生活費や医療費、住まいの維持費などが積み重なることで、想定より早く資産が減少するケースも少なくありません。総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯では、可処分所得が月23万1,198円である一方、消費支出は26万4,149円となっており、毎月約3.3万円の不足が生じています。こうした差額を補うため、多くの世帯が貯蓄の取り崩しに頼っているのが実態です。

医療と介護で加速した支出…「まだ大丈夫」が崩れた瞬間

加えて、中村さん夫婦には新たな支出が発生しました。妻の体調不良による通院費の増加と、遠方に住む親の介護支援です。

 

「医療費は毎月少しずつですが確実に増えましたし、親のことでまとまったお金が必要になることもありました」

 

こうした支出は一時的なものではなく、継続的に家計へ影響を与えていきました。

 

当初、中村さんは「資産があるから問題ない」と考えていました。しかし、その考え方自体がリスクだったと振り返ります。

 

「余裕があると思っていると、使い方が甘くなってしまうんです」

 

中村さんはファイナンシャルプランナーに相談し、家計の見直しを行いました。そこで示されたのは、「このままの支出水準を維持すると、想定より早く資産が減少する」というシミュレーション結果でした。

 

「初めて具体的な数字で見て、危機感を持ちました」

 

現在、中村さんは生活を見直しています。旅行の頻度を減らし、日常の支出も意識的に抑えるようになりました。

 

「我慢というより、現実を見て調整している感覚です」

 

今回のケースが示すのは、老後資金は「いくらあるか」だけでなく、「どう使うか」によって持続性が大きく変わるという点です。一見余裕があるように見える家計でも、支出の積み重ねや前提の変化によって状況は大きく変わります。

 

「4,800万円あれば安心だと思っていました。でも、時間とともに減っていくものなんですよね」

 

老後の安心は、数字の大きさだけでは測れません。その使い方と管理の仕方こそが、長く安定した生活を支える鍵になるのかもしれません。

 

 

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