市場の「結果」:少しだけ先行する成功事例を探す
市場の「結果」とは、少し先行して市場に受け入れられ始めている事業を調べることです。参考になるのは、直近で成功している海外スタートアップの事例です。それをもとに日本で似たような事業ができないかを検討します。これは「タイムマシン経営」と呼ばれる手法です。
成功事例を参考にする理由は、新規事業開発の失敗パターンは数多くありますが、成功パターンは限られているからです。成功事例を参考にすることで、ある程度のリスク検証を省略できます。
成功した企業が参入したタイミングや持っているアセットなどが異なるため、海外の事例をそのまま日本に持ち込んでも成功するわけではありません。それでも、市場の「予測」や「現象」をベースとして事業アイデアを出すよりも情報の信頼度は高いといえます。
どのような海外スタートアップを参考にするか
参考にする海外スタートアップを選ぶ基準として、「資金調達のラウンド」に注目する方法があります。スタートアップは複数の資金調達ラウンドを経て事業を成長させています。
資金調達ラウンドは、シード→シリーズA→シリーズB→シリーズC……などと呼ばれ、それぞれのラウンドで資金調達の意味合いが異なります。
例えば、シードは「これからプロダクトを作るための資金調達」、シリーズAは「PMFを達成したプロダクトを本格的に成長させるための資金調達」です。シリーズB以降はさらに組織を拡大したり、新しい事業に取り組んだりするための資金を調達する段階です。
これを踏まえて直近1年以内にシリーズAの資金調達をした海外スタートアップを調べると、今まさにPMFを果たし、これから本格的に拡大を目指す事業が分かります。
ただし、参考にするのは先進国のスタートアップに限定します。
途上国の場合、日本ですでに当たり前のサービスが「新しいビジネス」として評価され、資金調達を受けているケースがあります。
そのような事業は先進国で事業をする際の参考にはしづらいです。
具体的な海外スタートアップのリサーチ手順を解説します。
Crunchbaseからスタートアップリストの取得
まずはCrunchbaseというサービスから、スタートアップの資金調達情報を入手します。Crunchbaseには、全世界のスタートアップが「いつ、どのくらいの資金調達をしたか」が一覧になっており、条件に合ったスタートアップのリストをCSV形式でダウンロード可能です。推奨する検索条件は、次のとおりです。
抽出されたリストの量が少なければ、対象とする業種を増やしたり、最後の資金調達日の期間を延ばしたりして調整します。
AIによるリサーチ
Crunchbaseで抽出したリストには、「どのような事業を行っているか」の詳細情報が載っていません。そのため、リストにあるスタートアップのサービスURLをもとに、AIを活用して事業内容をリサーチしてスプレッドシートにまとめます。AIを使う場合は、検索が得意なAIを活用すると良いでしょう。
インプットとピックアップ
最後に、AIで抽出したスタートアップの事例を全て目視で読み込みます。これにより、対象市場で直近1年に成功した事例をひととおり把握できます。
この手法で大量に成功事例を読み込むと、ほとんどが似たようなビジネスモデルであることに気づくはずです。なぜなら、前述のとおり失敗パターンは多種多様ですが、成功パターンはそれほど多くないからです。
ここで見つけた成功パターンに従うほうが成功確度が高まります。自社のアセットを生かせそうなものや、日本国内でも展開できそうな事例をピックアップします。
ただし、コミュニティサービスだけは参考にする際に注意が必要です。コミュニティサービスは再現性が低いため、同じタイミング、同じ機能でリリースしても、はやる場合とはやらない場合があるからです。「人がいるから人気なサービス」よりも、「顧客の課題を解決するサービス」をピックアップするほうが成功の再現性があります。
阿部 拓貴
CINCA代表取締役 社長



