前回は、オフショア投資を目的とした、香港法人の種類などについて説明しました。今回は、その具体的な設立手続きや所要日数、実費などについて見ていきます。

会社設立は「申請書類の提出」による方法が一般的

今回は「香港私的有限会社」をどのようなプロセスを経て設立するのかについて、具体的に見ていきましょう。

 

香港での私的有限会社の設立方法としては、①株主や取締役がサインをした書類原本を香港会社登記所に提出する従来の方法(申請書類の提出)、②オンライン登記、③シェルフ・カンパニーの購入の、3種類に分けられます。

 

このうち、シェルフ・カンパニーの購入は一昔前はポピュラーでしたが、最近はオンライン登記が可能になったり、また少なくとも1名の自然人の取締役が必要になったりといった背景もあり、あまり聞かなくなりました。ここでは、従来の方法である申請書類の提出について説明していきます。

提出書類に問題がなければ「4営業日」で設立可能

大まかな手順としては、下記の2つとなります。

 

①社名候補を決定する

まず、希望の社名について類似商号がないかの調査をします。香港では商号の予約はできないため、調査の時点で類似商号がなくとも、実際に登記申請書類を提出する段階で他に僅差で使用されてしまっている可能性はゼロではないという点に留意が必要です。

 

社名は英語で最後に「Limited」を略さずに付ける必要があります。また、中国語の社名も任意で設定が可能ですが、中国語の字体は中国本土で使用されている簡体字ではなく、香港で使用されている繁体字となり、また最後に「有限公司」を付ける必要があります。日本語の漢字と似ているようでいて少し異なる字体もありますから、中国語社名決定の際にはご注意ください。

 

②香港政庁に規定書類を提出する

次に、定款を含む規定書類を香港政庁に提出します。定款については、設立代行業者等の雛形定款を採用することもできます。香港の定款は日本と違い、会社設立の目的を含む必要はありませんので、特殊な事業や合弁会社等を除き、雛形定款をそのまま採択することが可能です。

 

これらの提出書類に問題なければ、たったの4営業日で会社が設立されます。香港会社登記所より「設立証明書(Certificate of Incorporation)」が、香港税務当局より「事業登記証明書(Business Registration Certificate)」が発行され、設立証明書に記載された発行日が会社の設立日となり、この日から会社による事業開始や法人銀行口座の開設手続きが可能となります。

 

なお、香港政庁に支払う設立の実費費用として、会社登記所への設立料が1,720香港ドル、また税務当局への事業登記料が2,250香港ドル(毎年更新の場合。3年毎更新の場合は5,950香港ドル。但しこれら事業登記料は2015/2016年度現在のものとなります)、それぞれ資本金の金額に関係なく必要となります。

 

 

会社の設立後には、初回取締役会の開催、銀行口座開設や株券の発行といった手続きがいくつかありますが、この株券の発行をもって一連の設立手続きが完了となります。

 

香港私的有限会社が、必要書類の提出から4営業日という比較的短期間で設立できるという点は、投資家の方々にとっても注目に値する点だと思われます。

本連載は一般的な観点に基づいて執筆しております。具体的なアクションを起こす際には、事前に専門家のアドバイスを受けるようにしてください。また、本連載での「オフショア」とは、あくまで「日本からみた海外」という意味合いとなりますので、あらかじめご了承ください。

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