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「誰かに監視されている」「母に殺されるかもしれない」
母親:娘が監視されていると言って、夜も眠れないんです。昨日は、『お父さんがわたしを刺す、殺される。寝たら死ぬから眠れない』と。それから、自分で110番して、『母に殺されるかもしれない』と訴え始めて……。ここ数日で症状がさらに悪化して、『あげるものはありません』『外国に行きます』など、言葉遣いが妙に丁寧で他人行儀になっています。半年前から悩んでいる様子でしたが、娘の状態が明らかに悪くなったのは1カ月前くらいからです。
お母さんの話では、春香さんは複雑な家庭で育ったといいます。お母さんは再婚でした。家庭は荒れていたわけではないものの、どこか緊張が漂っていて、春香さんは“空気を読む”ことで場の空気を和ませようとしていたそうです。いつしか、自分の感情よりも周囲を優先する癖が身に付いていました。もともと真面目で努力家だった春香さんが、「頑張れば何とかなる」と思い込む背景になっていったのです。
春香さんは大学卒業後、念願だった大手食品メーカーに入社しましたが、研修を終えてから少しずつ様子が変わっていきました。
春香さんが配属されたのは、十人にも満たない小さな部署。忙しい部署で、常に誰かのため息やキーボードの音が響いています。直属の上司は、社内で語り継がれる実績の持ち主で、数字や成果に強いこだわりを持っていたそうです。報告書のわずかな抜け漏れも許さない。「仕事は結果がすべてだ」とくり返す口調には、容赦のない冷たさがありました。
春香さんは、最初はその厳しさを「社会人として成長するための試練」と受け止めようとしていたそうです。朝早く出社して資料を整え、上司が求める内容になっているか、何度も見直す。ミスをしないよう緊張感が張りつめる毎日でした。しかし、その「厳しさ」はいつしか、理不尽さを帯びるようになっていきます。
ミーティングで少しでも説明がつまずくと、上司の声が急に鋭くなり、会議室の空気が凍る。「こんなレベルの報告で通用すると思っているのか」と机を叩かれ、資料の束を投げ返される。どれほど準備しても、「まだ足りない」「やる気が感じられない」という言葉が返ってくるばかり。努力は積み重ねるほど否定され、自信は少しずつ削られていきました。
同僚に助けを求めても、皆どこかで上司の機嫌をうかがい、関わりを避ける。誰もかばってくれません。「わたしが、仕事ができないから悪いのかな」と思いながらも、どうすればよいのかわからない。昼休みの時間になっても、弁当の味がしなくなっていったそうです。