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資産があっても埋められない「社会的孤立」の恐怖
老後、安心できるだけの資産があれば問題はないように思えますが、実際には経済的な不安が解消された後に、「社会的な役割の喪失」というより深い問題に直面するケースがあります。
内閣府『令和4年版高齢社会白書』によると、65歳以上の51.6%が何らかの社会活動をしていると回答しています。
また生きがいについて尋ねたところ、1年の間に何かしらの社会活動(仕事やボランティア、趣味の集まりなど)をしている人は「生きがいを感じていない(あまり感じていない、まったく感じていないの合計)」は10.9%だったのに対し、社会活動をしていない人は33.0%。その差は3倍もありました。
また、東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、他者との交流が少ない「社会的孤立」の状態にある高齢者は、そうでない人に比べて死亡リスクが高まるというデータも示されています。
資産は、生活の糧であり、将来への安心材料です。しかし、それだけでは“毎朝起きる理由”にはなりません。現役時代に高い地位や収入を得ていた人ほど、退職後に“何物でもない自分”になったときのギャップに苦しみます。
「何のために生きているのかわからない」
そんな虚無感に襲われないために必要なのは、通帳の残高を増やすこと以上に、組織の肩書きに頼らない「新しい自分」の役割を、地域や社会の中に見つけておくことなのかもしれません。
[参考資料]
内閣府『令和4年版高齢社会白書』
東京都健康長寿医療センター研究所リリース『認知機能低下が死亡リスクをどう高めるかは孤立の種類次第:"独居"と"希薄なつながり"は正反対の作用を持つ』