(※写真はイメージです/PIXTA)
「おじさん、これだけ?」言葉には出さずとも伝わる“視線”の恐怖
「正直、冷や汗をかきましたよ。ポチ袋を開けた瞬間の、あの一瞬の間が怖くて……」
都内在住の高橋修一さん(52歳・仮名)。昨年の正月の苦い記憶をそう振り返ります。コロナ禍が明け、数年ぶりに実家に帰省したときのこと。親戚一同が集まる席で、小学生と中学生になる甥と姪にお年玉を渡しました。
用意したのは、自分が子どものころの感覚に基づいた「小学生3,000円、中学生5,000円」。新札を用意し、キャラクターもののポチ袋に入れて準備万端でした。しかし、中学生の甥が中身を確認した瞬間、表情がわずかに曇ったのを高橋さんは見逃しませんでした。
「『ありがとう』とは言ってくれましたが、なんとなく『これだけ?』という空気が流れた気がして。あとで弟(甥の父)に聞いたら、最近の子どもはスマホゲームの課金やら何やらで、金銭感覚がシビアになっていると言うじゃないですか。こちらの財布事情なんてお構いなしですよ」
物価高が叫ばれる昨今、食料品や光熱費だけでなく、子どもの「お小遣い相場」にもインフレの波が押し寄せているのではないか――。高橋さんのように、親戚付き合いのなかで“見えない相場”に戦々恐々としている大人は少なくありません。
自分の稼ぎは横ばいなのに、出費だけが増えていく。そんなお年玉へのプレッシャー、その実態はどうなっているのでしょうか。株式会社マルアイが実施した『2026年お年玉に関する実態調査』の結果をもとに、現代のお年玉事情を紐解いていきます。
意外と堅実? データで見る「お年玉の相場」
調査によると、2026年のお正月にお年玉をあげる予定がある人は全体の約4割。そのうち、あげる相手の人数は「平均3人」でした。少子化の影響もあってか、ばら撒くというよりは、特定の子どもたちに渡すケースが一般的のようです。
気になる金額ですが、実は高橋さんが心配するほど「高額化」一辺倒ではないようです。調査結果では、あげる相手が未就学児から高校生くらいまでの場合、「1,000円台~4,000円台」が主な価格帯であることが判明しました。
昨年の調査と比較しても、「1,000円未満」の割合がわずかに増えている一方で、「10,000円以上」の高額層は減少傾向にあります。どうやら世間の大人たちも、長引く物価高や家計の引き締めを受けて、お年玉の額を冷静にコントロールしている様子がうかがえます。
ただ、これには「あげる相手との関係性」が大きく関わってきます。調査では、「孫(ひ孫)」に対しては財布の紐が緩む傾向がはっきりと出ており、孫相手には「10,000円~40,000円以上」を渡すという人が約3割にのぼりました。
「自分の子どもや親戚の子にはシビアでも、孫となると話は別」という、祖父母世代の“愛とお金”の構造が透けて見えます。高橋さんの場合も、もし相手が「孫」だったら、3,000円では許されなかったかもしれません。