定年退職は、サラリーマン人生のゴールであると同時に、夫婦の新たな生活のスタートラインでもあります。退職金を元手に「田舎暮らし」や「趣味のお店」など、セカンドライフの夢を叶えたいと願う男性は少なくありません。しかし、そのプランはパートナーと共有できているでしょうか。ある夫婦のケースをみていきます。
〈退職金2,200万円〉59歳夫が妻に内緒で購入した「千葉・500万円の古民家」……定年目前、突きつけられた「緑の紙」の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の「夫婦の温度差」は致命傷になる

定年を機に夫婦関係が破綻するケースは後を絶ちません。その背景には、夫婦間で「老後の理想像」や「相手への依存度」に大きな乖離があるという現実があります。

 

ソニー生命保険株式会社がシニア層(50歳~79歳)を対象に実施した『シニアの生活意識調査(2024年)』によると、「老後も配偶者と一緒に暮らしたいと思うか」という問いに対し、「そう思う」と回答した割合は、男性が92.5%であったのに対し、女性は77.2%にとどまりました。

 

実に15ポイント以上の「温度差」が存在しており、夫が思うほど、妻は夫との同居生活に執着していない可能性が示唆されています。

 

また、内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』でも、高齢男性は社会的なつながりを「配偶者」に求める傾向が強いのに対し、女性は「友人」や「近所付き合い」に重きを置く傾向が見られます。

 

隆一さんのように、「妻も自分と同じ夢を見ているはずだ」という一方的な思い込みは、長年連れ添った夫婦であっても禁物です。特に、退職金や貯蓄といった「老後の命綱」を、相談なしに大きく動かすことは、信頼関係を一瞬で崩壊させる引き金となります。

 

定年前こそ、夢を語る前に、シビアな「現実のすり合わせ」が必要だったのかもしれません。

 

[参考資料]

ソニー生命保険株式会社『シニアの生活意識調査(2024年)』

内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』