共働き世帯が増え、「夫婦別財布」でお互いの収入や支出に過度に干渉しないスタイルが定着しつつあります。 しかし、その「自由」と「無関心」の境界線はどこにあるのでしょうか。家計に迷惑をかけなければ何にお金を使ってもいい、と安易に考えていたある男性のケースをみていきます。
「後ろめたいことはありません」42歳夫が2戸の投資用マンションを内緒で購入。妻が激怒した、役所から届いた「一通の封書」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「夫婦でも、踏み込んでほしくない領域がある」

「お互いに仕事を持っているし、ある程度の稼ぎもある。生活費さえ入れていれば、残りの金は自由。それが我が家のルールでした。だから、相談する必要なんてないと思っていたんです」

 

都内の大手メーカーで働く啓介さん(42歳・仮名)は、同い年の妻・香織さん(仮名)と中学生の息子の3人暮らし。世帯年収は1,800万円を超え、家計は典型的な「財布別々」スタイルでした。

 

啓介さんが不動産投資に手を出したのは1年前。同僚から「今ならお前の年収ならフルローンが引ける」と勧められたのがきっかけです。 物件は都内と横浜の区分マンション2戸、総額で約7,000万円。「家賃相場も上がっているし、月々の収支はプラス数千円。節税効果を考えれば悪い話じゃない」と判断し、妻には事後報告すらしていませんでした。

 

「別に後ろめたいことはありませんでした。私個人の信用で借りて、私の口座で回している。家計には1円も迷惑をかけていないんですから」

 

しかし、すぐに香織さんが知ることになります。きっかけは、区役所から届いた一通の封筒でした。

 

「『納税通知書』です。普段は私がポストを確認して自分の部屋に持ち込むんですが、その日はたまたま出張中で、妻が郵便物を受け取ってしまった。封筒の宛名は私ですが、役所からの重要書類だと思って、妻が怪しんで中身を見てしまったんです」

 

帰宅した啓介さんを待っていたのは、ダイニングテーブルに広げられた納税通知書と、ムスッとした香織さん。

 

「『なにこれ。世田谷と横浜? 家を買ったの?』と静かにキレていました。私は『投資用だよ。収支はプラスだし、君には迷惑かけない』と説明しました」

 

香織さんは、金銭的な損得ではなく、その「規模」と「秘密」に激昂しました。

 

「怒りのポイントは、7,000万円ものローンを秘密にしていたこと。『財布が別なら何をしてもいいと思ってるわけ?』と。『何かあったら責任が取れるのか!』と言われたので、『万一のときは団信があるから』と答えたら、さらに怒られました」

 

確かに、黙って不動産投資を始めたことは反省していると啓介さん。しかし、今のところ収支はプラスで回っているので、しばらく売却するつもりはないといいます。

 

「その代わり、夫婦仲は結婚以来最悪です」