輝かしい経歴と高い専門性を武器に、高年収で迎え入れられた「即戦力」のエリート人材。しかし、意気揚々と新天地に乗り込んだものの、わずかな期間で現場から孤立し、期待された成果を上げられないケースも珍しくありません。なぜ、過去の実績が通用しない事態に陥るのでしょうか。その背景には、採用企業が重視するポイントと、現場で実際に求められる能力との間に横たわる、決定的なミスマッチが潜んでいます。あるエリートサラリーマンのケースをみていきます。
「俺ならやれるんで」〈年収1,500万円〉意気揚々の45歳エリート、転職3ヵ月で“総スカン”を食らった、あまりに恥ずかしい誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

調査データが示す「優秀なのに嫌われる人」の正体

株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントが2025年10月に実施した調査(経営層・採用責任者1,000名以上対象)によると、企業が採用時に重視するのは「高度な専門性」(43.2%)や「実績」(26.5%)でした。 多くの企業が「過去の数値的成果」を安心材料として合否を決めているのです。

 

しかし、入社後に実際に活躍する人材の共通点は「組織をけん引する力」(30.6%)や「戦略やビジョンを描く力」(31.9%)でした。 逆に「期待外れ」となる最大の要因は「マネジメント力不足」(27.5%)や「スタイルが合わない」(26.6%)。

 

つまり、企業は「過去の栄光(実績)」を見て採用しているにもかかわらず、現場で本当に必要なのは周囲を巻き込む「人間力」や「推進力」であるという、決定的なミスマッチが起きているのです。 環境が変われば求められる戦い方も変わる――その認識が甘いままでは、高年収人材の採用は「死に金」になりかねません。

 

その後、大崎さんはどうしているのでしょうか。

 

「まだ会社にはいますよ。でも、部長職は解かれました。今は部下のいない『特命担当』として、窓際の席で一日中、海外のニュースサイトを見ています。年収が高いので辞めさせることもできず、会社のお荷物状態です」

 

[参考資料]

株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(JAC Recruitment)『【調査レポート】なぜ年収1,000万円超でも“期待外れ”になるのか?』