(※写真はイメージです/PIXTA)
5年間の無収入に耐え、年金受給額を増額する選択
増額狙男さん(仮名・75歳)は、妻の倍代さん(仮名・73歳)と二人で暮らす元会社員です。65歳になった際、もらえるはずだった年金月額15万円を受け取らず、70歳まで「繰り下げ」を選択しました。
「年金は繰り下げるほどお得になるとテレビや雑誌で見たから、長生きに備えて年金を増やそうと思ったんです」
5年間は無年金となるため、これまで貯めてきた老後資金を毎月切り崩して生活をしのぎました。そして70歳になり、42%増額された月21万3,000円の年金を受け取れるようになったとき、狙男さんは「これで一生安泰だ」とほっと一息つきました。
しかし、その喜びは長くは続きませんでした。
年金の額面が増えたことによって、想像以上の税金と社会保険料が天引きされるようになったのです。月15万円のころは非課税の範囲に収まっていた住民税が、増額したことで課税対象になり、さらに介護保険料や国民健康保険料のランクも上がってしまいました。
「思った以上に引かれるので、手取りで見るとまったく増えた実感がありません」
医療費の窓口負担が2倍に…「税金と保険料」で手残りが増えない現実
狙男さんをさらに絶望させたのが、75歳を機に移行した後期高齢者医療制度の窓口負担でした。
原則1割負担で済むはずの医療費ですが、狙男さんは年金を繰り下げて月21万3,000円、年額にして約255万円に増やしてしまったため、一定以上の所得があるとみなされ、窓口負担が2割に跳ね上がってしまったのです。
「私も妻も高血圧などの持病があり、毎月複数の病院に通っています。これまでは数百円で済んでいた薬代や診察代が、家計を大きく圧迫するようになりました。先日、私が軽い手術をした際も、出費が想定の倍に……」
生活が楽になると考えて年金を増やした結果、税金と保険料で天引きされ、残ったお金も高い医療費に消えていく。5年間も貯金を削って我慢したのに、長生きすればするほど損をしているような現実に、狙男さんは「普通に65歳からもらっておけばよかった」と後悔しています。