定年後も同じ会社で働き続ける継続雇用は、今や一般的な選択肢です。しかし、そこで待ち受けているのは、現役時代とはあまりに異なる給与額という厳しい現実。振込額を見て愕然としつつも、かつてのプライドや生活水準を捨てきれない……定年前は管理職だったという、ある男性のケースをみていきます。
「えっ、手取り20万円!?」給与減に震える60歳夫。プライドを捨てきれず、妻に隠れて「退職金2,800万円」を崩し続けた末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

60代前半の半数が「現役時代の半分以下」。見栄は身を滅ぼす

株式会社パーソル総合研究所が2025年7月に結果を発表した『企業の60代社員の活用施策に関する調査』によると、企業の約4割が50~60代正社員を「過剰/やや過剰」と感じ、特に大企業で、50~60代正社員の人材過剰感が強いということがわかりました。

 

65歳までの雇用義務に加え、70歳までの就業確保努力義務が課されるなか、シニア社員が多いという課題感をもつ企業が多い現状、定年で雇用形態が変更になった場合の給与減は仕方がないことといえるでしょう。

 

60歳での処遇見直しにおける年収の変化は、平均で28%のダウン。定年前、高い役職につき、そこから契約社員等になった場合、給与が半分に……ということも珍しくないでしょう。

 

【60歳での処遇見直しにおける年収の変化】

・年収があがる……2.2%

・ほとんど変わらない……10.1%

・10%程度下がる……9.2%

・20%程度下がる……17.2%

・30%程度下がる……29.2%

・40%程度下がる……17.2%

・50%程度下がる……9.9%

・60%以上下がる……4.9%

 

給与が半分になったから、プライドも半分に……そんな簡単なことなら、山本さんのようなことは起きないでしょう。しかし、元上司などというプライドが邪魔をして、今まで通りの顔をしてしまう、部下に奢り家族にもよい顔をしてしまう――決して珍しいことではないようです。

 

定年後、再雇用で働く場合、まずは「手取り収入だけで暮らす」サイズに生活をダウンサイジングすることが絶対条件。退職金は「使っていいお金」ではなく、「働けなくなったあとの命綱」。「俺が払うよ」というそのひと言を飲み込んで、「ごめん、今は小遣い制なんだ」と笑って言える勇気が必要のようです。

 

[参考資料]

株式会社パーソル総合研究所『企業の60代社員の活用施策に関する調査』