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「会社を辞めるんじゃなかった」SNS広告を信じた男の末路
――今の会社に不満があるなら、辞めても大丈夫。国からの給付金を最大限もらって、ゆっくり次の人生を考えましょう
そんな甘い言葉が並ぶSNSの広告をタップしたのが、すべての始まりでした。 佐藤健一さん(39歳・仮名)。前職は中堅の物流会社の営業職で、手取りは月28万円ほど。独身で生活に困窮していたわけではありませんが、仕事内容に対して薄給だったことや、昇給が見込めない将来に漠然とした不安を抱えていたといいます。
「正直、仕事に疲れていました。そんな時、『退職コンサルタント』や『給付金サポート』という広告がやたらと目につくようになって。本来なら3ヵ月程度しかもらえない失業手当が、彼らのサポートを受ければ『最大28ヵ月もらえる』と書いてあったんです」
通常、自己都合退職の場合、失業手当(基本手当)の給付日数は90日~150日程度。しかし、サポート業者の説明は魅力的でした。 「社会保険労務士が監修している」「法の抜け穴ではなく、正当な権利」と強調され、佐藤さんはすっかりその気に。 手数料は受給額の30%、または数十万円の固定報酬。決して安くはありませんが、「受給期間が延びれば元は取れる」と計算し、契約書にサインをしてしまいました。
会社には「親の介護」と嘘をついて退職。ここまでは順調でした。 しかし、具体的な申請手続きの打ち合わせに入った瞬間、担当者から耳を疑う指示が飛んできたのです。
「佐藤さん、まずはこの心療内科に行ってください。提携している病院です」
担当者が地図アプリを見せながら淡々と言い放ったのは、不正受給の片棒を担ぐ「命令」でした。
「『夜眠れない、食欲がないと言って診断書をもらってください』と言うんです。私は至って健康だし、精神的な不調もない。そう伝えると、『それじゃあ給付期間は延びませんよ。皆さんやってますから』と、まるで事務手続きのひとつのように言われました」
佐藤さんが「嘘の申告はできない」と抵抗すると、業者の態度は急変。「すでにコンサルティングは始まっている」「今やめるなら違約金として15万円払え」と凄まれたといいます。
「その時、自分が『カモ』にされたんだと気づきました。結局、違約金を払うのが嫌で、今は業者からの連絡を無視していますが、いつ請求書が届くかビクビクしています。もちろん、失業手当の手続きも進んでいません。退職して収入ゼロ、貯金を取り崩す毎日です」