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「元管理職」のプライドはズタズタ…再雇用で直面した「居場所のなさ」
大手メーカーで管理職として活躍してきた佐藤隆さん（60歳・仮名）。60歳で定年を迎えた現在は、再雇用制度を利用して働いています。
「現役時代は、手取りで月60万～70万円はもらっていました。しかし、再雇用後は月収で25万円になりました。役職手当がなくなり、正社員から契約社員になったので、当然といえば当然の金額なのですが、実際に明細をみたときは、やはりショックは隠せませんでした」
給与の減少以上に精神を削っているのが、職場での立場の変化です。かつて自分の部下だった人間が上司となり、自分は新入社員でもできるような資料整理やデータ入力ばかりを任される日々。業務内容について知らされたうえでの再雇用でしたが、はっきりいって“やりがいはゼロ”。さらに「元管理職」という肩書きが邪魔をして、周囲の若手社員も隆さんをどう扱っていいのか分からず、職場では腫れ物扱いされているといいます。
「会社では存在そのものが老害だと思われているでしょうね。だから極力口を開かず、大人しくしています。でも、誰からも頼りにされず、ただ時間だけが過ぎるのを待つというのは、男として本当に惨めなものです」
会社での居心地の悪さを抱え、逃げるように帰宅しても、そこには安らぎはありませんでした。専業主婦の妻、洋子さん（58歳・仮名）との関係にも変化が生じていたのです。
現役時代は深夜帰宅が当たり前でしたが、今は定時退社で19時には帰宅します。家にいる時間が増えた夫に対し、洋子さんの不満が募り始めました。
「妻からは『前より暇になったんだから、もう少し家のこと手伝ってよ』と言われるようになりました。私としては、慣れない環境で神経をすり減らして帰ってきているわけです。それなのに家でもこき使われるのかと、不満が蓄積していきました。そしてつい、カッとなって怒鳴ってしまったんです。『じゃあ、お前が稼いでこいよ！ 誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ』と……」
その発言以来、夫婦仲は結婚以来最悪。洋子さんは必要最低限の連絡以外、隆さんを無視し、食事も別々になりました。会社では邪魔者扱い、家では無視され、隆さんは今、どこにも居場所がないといいます。
