輝かしい経歴と十分な資金を手にして踏み出した、理想のセカンドキャリア。しかし、大企業出身者のエリートだから陥りやすい落とし穴が……新天地で奮闘する、ある男性のケースをみていきます。
年収1,500万円を捨て故郷へ…「無駄な会議は不要」とコンサル気取りの51歳元部長に、地元有力者が冷たく放った「痛烈なひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

起業家「顧客・販路の開拓」が課題だが…

パーソルキャリア株式会社/Job総研『2023年 地方移住の意識調査』によると、「地方移住ワークに興味があるか」の問いに対し、50代は57.1%が「興味がある」と回答(「とても興味がある」、「興味がある」、「どちらかといえば興味がある」の合計)。

 

興味がある理由としては、「首都圏よりも居住費が安い」、「転職をせずに地方への引っ越しができる」、「自然の中で生活ができる」が上位を占めました。一方で、移住のハードルとしては「環境が変化することへの抵抗感」、「移住にかかる費用」、「地方での生活がイメージできない」が上位に挙がっています。

 

50代の場合は、「定年後の仕事」や「これまでのキャリアの活かし方」を主軸に、佐伯さんのように「地方でひと花咲かせたい」と意欲をもつケースも多いでしょう。

 

起業における現実的な課題を見ていきます。日本政策金融公庫総合研究所『2024年度新規開業実態調査』によると、開業時の年齢は40代が最大(37.4%)。50代は20.8%でした。また開業時に苦労したことは、「資金繰り、資金調達」(59.2%)、「顧客・販路の開拓」(48.1%)、「財務・税務・法務に関する知識の不足」(36.7%)。そして現在苦労していることは、「顧客・販路の開拓」(47.7%)、「資金繰り、資金調達」(37.0%)と続きました。佐伯さんのように「顧客・販路の開拓」で苦労を覚えるケースは珍しくないようです。

 

また中小企業庁『中小企業・小規模事業者の経営相談に関する実態調査』等を見ると、経営者が外部の専門家に相談する際に重視する項目として、専門知識の高さ以上に「親身になって話を聞いてくれる態度(伴走支援の姿勢)」や「自社の業界・風土への理解」が上位に挙げられます。東京のやり方を振りかざす前に、やるべきことがあったということでしょうか。

 

「地元経済の活性化なんて言っておきながら、地元のことをまったく考えていなかった。今はまず、地元のやり方含めて理解を深めることを最優先に、非効率的と切り捨てた飲み会にも積極的に参加しています」

 

[参考資料]

パーソルキャリア株式会社/Job総研『2023年 地方移住の意識調査』

日本政策金融公庫総合研究所『2024年度新規開業実態調査』

中小企業庁『中小企業・小規模事業者の経営相談に関する実態調査』