文部科学省が「グローバル人材」の育成を掲げる昨今、我が子に早期から英語教育を受けさせたいと願う親は増え続けています。2023年に実施された「子どもの習い事と英語学習に関する調査(ゲシピ株式会社)」によると、親が「子どもの頃に習っておけばよかった」と思う習い事の第1位は「英語・英会話」。自身の後悔から、子どもには苦労させたくないと願う親心は切実です。
世帯年収1,150万円の30代夫婦…少し背伸びして長男を入れた「インターナショナルスクール」、初めての遠足で「保護者へのお願い」に驚愕したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

我が子には英語教育を

都内在住、31歳のモモさん(仮名)は中小企業に勤務しています。年収は550万円。一つ年上の夫は中堅企業勤務で年収600万円。世帯年収は1,150万円です。都内で子育てをするには決して「超富裕層」ではありませんが、平均的な家庭よりは余裕があるという自負がありました。

 

「いまの会社に大きな不満があるわけではありません。でも、転職サイトの歓迎条件に『ある程度の語学力』とあるところも多く、もし私に英語力があれば、もっと条件のいい企業に転職できたかもしれない……。そう思うことがあります」

 

自身のキャリアに対するコンプレックス。それが、息子への教育熱に火をつけました。夫婦で話し合い、長男の幼稚園選びでは思い切ってインターナショナルスクールを選択します。授業料は年間約200万円。自治体の助成制度などを活用すれば、共働きの家計ならなんとかなる金額です。「このまま小学校もインターに通わせるために、幼稚園から英語に耳を慣らしておかなくちゃ」そんな親心でスタートした、モモさん一家のインター生活。

 

しかし、その見通しは入園最初のイベントであっけなく打ち砕かれます。

遠足の案内

最初の遠足の案内が届きました。そこには、普通の幼稚園とは少し違う記載がありました。

 

『お菓子を持参する場合は、クラス全員に行き渡る量を持ってきてください』

 

「えっ、全員分って……」

 

モモさんは驚愕しました。日本の幼稚園なら「おやつは300円まで」といったルールが一般的です。しかし、ここはインター。シェアするのが文化だといわれればそれまでですが、アレルギーへの配慮や個包装の手間、毎回20人分(少人数制なので学年全員分)を用意する金銭的・精神的負担は小さくありません。

 

「でも、ここで変なものを持たせて『これだから庶民は』なんて思われたくない」

 

モモさんの胸に、つまらない見栄が頭をもたげました。モモさんは仕事帰りに高級スーパーに立ち寄り、個包装されたクッキーやチョコレートを20個分、予算は3,000円ほどで購入。「これなら見劣りしないはず」そう、遠足のリュックに詰め込みました。