(※画像はイメージです/PIXTA)
1等6億円当選…年金暮らしの元サラリーマンに転がり込んだ「幸運」
<事例>
Sさん 66歳 元会社員 年金月20万円
妻Tさん 66歳 年金月10万円
宝くじ当選前の資産額 5,700万円
Sさんは、60歳で大手メーカーを定年退職した元会社員です。
都心に所有している自宅マンションは退職と同時に完済。退職金は約3,500万円でした。2人の子供の大学進学と留学に費用が掛かったため、それまでの年収のわりに預貯金は多くなく、2,700万円程度。手元にある資産額は5,700万円です。退職時に相談したFPからはマンションを高額で売却して郊外に安めの戸建て住宅を買うライフプランを提案されましたが、Sさん夫婦は都心暮らしが性に合っていると思っています。老齢年金は、妻と合わせれば月30万円。都心暮らしとしては決してゆとりがあるとはいえないものの、静かに暮らすには十分な資産額と収入でした。
趣味は、近所にある古い喫茶店で新聞を読みふけること。いまどきのカフェとは違い、ノートパソコンを開いて仕事をするビジネスマンはいない店です。客層は、ほとんどがSさんのような高齢者。静かな店内で新聞を読みながらモーニングをいただき、帰りに宝くじ売り場で宝くじやロトを少しだけ買うのが好きなのです。毎回、売り場の女性に当選を確認してもらい、全部外れていても夢を買っているので楽しいといいます。
しかし、ある日、いつものように売り場で券を渡すと、機械を通した女性がいつもと違う面持ちでSさんをみました。高額当選のため、銀行で手続きをするよう、案内されます。
Sさんは、封筒に入れられた当たり券を受け取り、銀行へと向かいました。
(高額って、いくらだ? 100万円か? いや、1,000万円くらいだったらどうしよう……)
銀行では、個室に通されました。当たり券が本物であると確認されたあと、担当者から告げられた金額に震えます。
「1等、6億円……」
現実感がありません。かといって嬉しいという感覚も皆無です。喜びどころか頭が熱くなり、少しめまいもします。手に持ったポーチに入っている当選証明書を、破ってコンビニのごみ箱に捨てようかとも一瞬考えました。6億円という金額の大きさに、少し怖くなったのです。人生が壊れるような錯覚に襲われました。
しかしSさんはすぐに思い直します。
「宝くじなんて雷に打たれる確率よりも低いと聞いたことがある。これも人生経験だ、ちょうど車が欲しかったし、自宅のトイレも直したいと思っていた。もし自分がお金のせいでおかしくなってしまうようなら、全部寄付してもいいだろう」
ただし、妻Tさんには内緒にしておくことにしました。妻は現役時代からお金に細かく、結婚した直後から晩酌のビールも禁止され、発泡酒に。車もずっと軽自動車でした。もちろん妻のその努力がなければ2人の子供を留学させるなど無理だったわけですが。ともかく、宝くじが6億円も当たったとなると、自分よりも妻がおかしくなるかもしれません。