人生の折り返し地点を過ぎ、出世や金銭的な目標を達成した後に訪れる、得体の知れない「虚無感」。仕事への情熱を失い、家庭にも居場所がないと感じたとき、人は刺激を求めて禁断の果実に手を伸ばしてしまいがちです。東京都心に住む会社員の事例をみていきましょう。※個人の特定を防ぐため、事例は一部脚色しています。
年収3,200万円の52歳エリートサラリーマン、都心タワマン・ポルシェを買って満ち足りた生活のはずが…襲い来る〈猛烈な虚無感〉。「いってきます」と専業主婦妻を欺き、北陸新幹線に飛び乗ったワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

「まさか、あの人が…」

社会的地位があり、家庭も円満にみえ、経済的にも成功している中年男性が、突如として不倫やハラスメント、コンプライアンス違反といった破滅的な行動に走り、すべてを失う――。昨今、こうしたニュースが後を絶ちません。有名人だけではなく、同じ職場でもそのようなケースを見聞きしたことがある人は多いでしょう。

 

なぜ、そのような中年男性は築き上げてきたものを一瞬で無に帰すようなリスクを冒すのでしょうか? どのような結果になるか、わかっているはずなのに――。実は、その背景には「ミドルエイジ・クライシス」と呼ばれる、この年代の男性特有の精神状態が潜んでいます。

 

50代は人生の折り返し地点です。会社員の場合は定年までほんの10年程度しか残っていない、集大成の時期でしょう。若いころのような野心や夢は消え、体力と気力は極端に低下し、毎日体調がどこか悪い。いろいろな経験を積み重ねたがゆえに何事にも慎重。その姿は若い部下たちから「保身に走ったやる気のない老害」と揶揄されることさえあります。自分の社会人生活とはなんだったのか、これから先、どうやって過ごしていけばいいのか、見失いつつある世代なのです。

 

特に、若いころから優秀な実績を積み上げてきた男性ほど、この危機が深刻化しやすい傾向があります。正直なところ仕事にはすでに飽きていて、出世欲もない。金銭で買えるものはほとんど手に入れた。なのに、心の奥底にあるのは強烈な「焦燥感」と「虚無感」。これを埋めようとするとき、破滅的な行動に走りがちなのです。不倫行為がその典型例でしょう。学生のころから優秀で決してはめを外さなかった優秀な男性が、突然、中年を超えてから不倫の恋に没入し身を滅ぼしていくわけです。

 

本人たちが求めているのは単なる性的快楽ではありません。若いころに信じられた「エネルギッシュな自分」を、また取り戻そうとする行為なのです。しかし立場がある男性ですから、その代償は大きく、社会的にも経済的にも取り返しのつかないものとなります。ある事例をご紹介します。