(※画像はイメージです/PIXTA)
冬のある日、ファミレスで目撃した光景
<事例>
子供 英明さん(仮名) 56歳 会社経営
母親 洋子さん(仮名) 82歳 年金生活/月額12万円
英明さんは会社経営をする56歳の男性です。父親から引き継いだ建設会社は経営が苦しくなるばかり。その日も取引先を回る営業活動をしていました。
シビアな交渉に疲れ果て、一休みしようと入ったのは上野駅近くのファミレスでした。そこで甘いものでも食べて息抜きをしようと思ったのです。一人でパフェを食べていると、隣の席に30代くらいの男性がやってきました。先に来て座っていた80代くらいの女性と待ち合わせしていたようです。
男性はチノパンとニットという清潔感のある服装で、驚くほど物腰が柔らかい。「これ、よかったら食べてください」と和菓子屋のものであろう紙袋を手渡しました。喜ぶ高齢女性。英明さんはその若い男性を横目でみて、介護施設の職員かなと一瞬思いました。それほど穏やかで高齢者との会話に慣れているようにみえたのです。少なくとも営業マンではないだろうなと。
なぜか英明さんはその二人に興味を持ってしまい、聞き耳を立てていました。女性はどうやら亡くなったご主人の話をしているようです。若いころはヨーロッパ各国に駐在していたという話をしていました。「あのころは和菓子が恋しくなってね……」などという懐かしんでいます。次第に話は亡くなった夫の自慢めいた話に。それを大げさなほど感心して聞く男性。女性に呼びかけるときは下の名前を呼んでいます。女性は留まるところ知らず、ずっと気持ちよさそうに話を続けています。
英明さんは男性の話術に驚きつつ、この人はなんの仕事をしているのだろうと興味をもちました。やっぱり保険の営業マンなのか、それとも健康器具か、ネットワークビジネスか。いずれにしてもこの柔和な雰囲気で懐に入っていくのはすごい器量だなと思いました。
しかし、違和感を覚えたのは、英明さんが店を出ようと席を立ったとき。英明さんはうっかりスプーンを床に落としてしまいました。その瞬間、キッと英明さんをみる男性の目は、会話の雰囲気とはまったく違い、眼光が鋭かったのです。音に驚いたというよりも、警戒しているような表情でした。
「ああ……」英明さんはなにかを察してしまいました。偏見かもしれないが、あれはあまりいい面談ではないな、そう思いました。あの女性は自分の母親と同じくらいの年齢。話し方もよく似ていました。あれが詐欺だとしたら、実家の母親は大丈夫だろうかと、ふと頭をよぎったものの、会計を済ませ店を出るころには、その不安を忘れてしまっていました。
しかし、英明さんの予感は、悲しい形で的中することになります。