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最期を前に「終活離婚」という選択肢
株式会社オースタンス/趣味人倶楽部が発表した『終活に関する意識調査レポート』によると、終活を始めるきっかけとして「残された家族のため」という理由が最多である一方、「残りの人生を自分らしく前向きに生きるための準備」というポジティブなイメージを持つ人が約4割にのぼることも明らかになりました。
明夫さんの決断は、まさにこの後者の側面を強く反映しています。彼にとっての離婚は、残された1年を「自分らしく、精神的に楽に」生きるための、最も重要な「終活」だったといえるでしょう。
また、同調査では、終活を本格的に着手する年代は「60代」がピークであり、その具体的なきっかけとして「病気や入院」「定年退職」といったライフステージの変化が大きく影響していることが示されています。60歳で定年を迎え、65歳で末期がんの宣告を受けた明夫さんの状況は、まさに多くの人が終活を意識し、行動に移す典型的なタイミングと重なっていたといえるでしょう。
同調査では、終活の必要性を感じる人が9割以上にのぼる一方で、実際に実践できている人は43.2%に留まるという「意識と行動のギャップ」が浮き彫りになりました。
その理由として「まだ自分には早い」という心理的なハードルや、「何から始めたらいいかわからない」という情報不足が挙げられています。
明夫さんのように、「病気」という引き返せない状況になってから慌てて終活(さらに離婚)に踏み切るのではなく、まだ体力も気力もある「定年退職」などの節目こそが、人生の整理を始める最適なタイミングといえます。
終活というと、「物」の整理や、「お金・資産」の整理(相続や年金分割)といった物理的な側面に意識が向きがちです。
一方で、人生の最期を目前にして、長年連れ添ったパートナーとの関係を清算する——。「終活離婚」を選択するパターンもあります。
これは単なる関係の破綻ではなく、残された人生を自分らしく、精神的なストレスなくまっとうするために、あえて選ばれるポジティブな「人間関係の整理」です。
明夫さんは、余命宣告という差し迫った現実を前に、「終わっていた関係」を続けることよりも、「一人の楽な精神状態」を選びました。そして財産分与や保険の見直し、葬儀の段取りまで済ませ、「晴れ晴れとしている」と語っています。この決断は、彼にとっての「尊厳ある最期の迎え方」を実現するための終活であったといえるでしょう。
[参考資料]
株式会社オースタンス『【7月29日は生前整理の日】「終活」に関する意識・行動調査〜900名の調査で分かった終活を始める”きっかけ”やその”背景”とは』