憧れの都心マンションは、予算的に手が届かない。そこで、「家族のため」「広さのため」と自分に言い聞かせ、郊外の戸建てを選ぶ――。それは、多くの家庭にとって現実的で賢明な代替案でしょう。しかし、その決断が数年後、深刻な後悔に変わるケースも。本記事では、Aさんの事例とともにマイホーム購入時の二大リスクについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
港区タワマンのローン審査に落ちました…妥協で東京郊外・始発駅に「広くて庭付き」「子育て向き」の一軒家を購入した年収1,200万円の30代夫婦、3年後に知った「絶望的誤算」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

タワマン購入希望も、ローン審査に落ちる

現在42歳のAさんは、品川の大手メーカーに勤務する年収1,200万円のサラリーマンです。家族は3歳年下の妻と5歳になる息子が一人。通勤に便利な社宅住まいでしたが、子どもが大きくなることを見据えて、思い切ってマイホームの購入を決断したのが、3年前のこと。

 

夫婦ともに憧れがあったのは、Aさんの勤務先にも近い港区のタワーマンション。当時すでに中古でも1億円を超えていました。65平米で約1億5,000万円の物件の購入を真剣に検討します。

 

貯蓄から頭金3,000万円を用意したものの、ローン審査に落ちてしまいます。産後、専業主婦となったAさんの妻は「私が働いていれば、審査に通ったかもね」と肩を落としました。

 

Aさんは「ローン返済だけでも年間370万円を超えるし、現実的じゃないよね。少し離れても庭付きの一軒家のほうが息子のためにもいいかもしれない」と切り替えます。妻も「そうね。マンションよりも広いし、ローンの返済額も下がるでしょうから、その分、習い事にお金をかけられるわね」と賛成しました。

 

2人がみつけたのは八王子の新築分譲住宅で、価格は約5,000万円。家計に余裕を持たせるため、頭金は1,000万円にとどめ、4,000万円のローンを組みました。貯蓄の残りは将来の教育資金と生活予備費に回すことに。

 

購入した戸建てはマンションに比べるとやはり広く、子どもが大声で走り回っても気を使うことはありません。夏はビニールプールを庭に置いて遊ばせることもできました。子どもの元気に遊ぶ姿を見て「やはり一軒家にしてよかった」と喜んだ夫婦でしたが、その生活には大きな“代償”が伴いました。