仕事のストレス、人間関係の疲れ、将来への漠然とした不安。そんな息苦しさから、SNSでみかける「シンプルな暮らし」や「持たない生活」に憧れを抱く人は少なくありません。モノを手放すことで得られる解放感は、確かに魅力的です。しかし、そんな生活がエスカレートしていくと……。※紹介する事例は、著者である川淵ゆかりFPの過去の相談者であるA子さんから許可を得て、個人の特定を避けるため一部脚色したものです。
「ミニマリスト」の月収29万円・30歳独身女性、増え続ける通帳残高にニヤけるも…訪ねた母親も思わずあんぐり。過激な“ストイック生活”の実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

失恋、仕事の悩み…「なにもない部屋」に救いを求めた女性

30歳、独身のA子さんは月収29万円(賞与別)の営業職。大学進学で地元から離れて以来、都内で一人暮らしを続けています。兄が一人いますが、すでに結婚して子どももおり、実家で両親と仲良く暮らしていることから、A子さんはどこか疎外感を覚え、家族関係も希薄になっていました。

 

仕事では、最近ついた部下の教育に悩み、営業職という仕事柄から人間関係にもストレスを感じる日々。そして、それ以上に辛かったのが、3年間付き合い、結婚も考えていた恋人との突然の別れでした。

 

仕事以外で外出することもなくなり、部屋に閉じこもるようになったA子さんを惹きつけたのは、ある日SNSで流れてきた、ミニマリストの「なにもない真っ白い部屋」の画像。

 

10年以上の一人暮らしで、物に溢れた息苦しい自分の部屋と比べると、それは、自分を新しく生まれ変わらせてくれるようにみえたのです。もともと真面目で熱心なA子さん。その日を境に、ミニマリストの生活に目覚め、実行に移していきました。

「持たない暮らし」で得た“充実感”

家具や家電、洋服など必要最低限のものだけ残し、シンプルな生活に目覚めたA子さんは日々の煩わしさから解放されていくような気分でした。

 

これを機に、食生活も見直します。朝はもともとコーヒーだけだったのですが、外食だったランチはお弁当を持参し、ウーバーイーツに頼りがちだった夕食も自炊に切り替えました。そして、「ついでにダイエットもしよう」と決心したA子さんの食事は、日を追うごとに質素なものになっていきました。

 

不要と思われるものを売り、洋服や美容院、食事などにもお金をかけなくなったことで、A子さんの貯金は増えていきます。食事も変えたことで、体重も減りました。