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厳しいシングルマザーの「居住」と「経済状況」
美咲さんのような経験は、決して特別なものではない。ひとり親世帯、特に母子世帯が賃貸住宅の契約で困難に直面するケースは、後を絶たないのが現状である。
国土交通省は、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」において、低額所得者や被災者、高齢者などと並び、「子育て世帯」を住宅の確保に特に配慮を要する者として定めています。これは、国として、子育て世帯が住まいの確保で困難な状況に置かれやすいことを認めている証左といえる。
その背景には、厳しい経済状況がある。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯全体の平均年間所得が785.0万円、稼働所得が686.8万円であるのに対し、母子世帯の平均年間所得は328.2万円、稼働所得は270.6万円と、半分以下に留まっている。美咲さんのように、月収18万円(年収216万円)で暮らす母子世帯は、決して少なくないのである。
こうした経済的な不安定さが、家賃の支払い能力への懸念と見なされ、入居審査で不利に働く大きな要因となっている。
では、住まい探しに困難を抱えるシングルマザーは、どうすればよいのでしょうか。
まず考えられるのは、公的な支援の活用です。各自治体が運営する公営住宅(都営住宅や市営住宅など)は、所得に応じて家賃が設定されるため、民間の賃貸住宅よりも負担を抑えることができます。ただし、応募者が多く、入居までに時間がかかるケースも少なくありません。また、離職などにより住居を失うおそれがある場合に、自治体が家賃相当額を支給する「住居確保給付金」といった制度もあります。利用には収入や資産などの要件があるため、まずは自治体の窓口に相談することが重要です。
民間の支援に目を向ける方法もあります。近年では、NPO法人が運営するシングルマザー向けのシェアハウスや、ひとり親世帯の入居に理解のある家主と繋いでくれる不動産会社も少しずつ増えてきました。保証人がいない場合でも、NPOや一般社団法人が提供する保証サービスを利用できることもあります。
「大変だったけど、今住んでいるマンションを仲介してくれた不動産会社は本当に親切な方ばかり。家賃を持っていくたびに、子どもにお菓子をくれることも。シングルマザーには厳しい世の中ですが、捨てたものではありません」
[参考資料]
国土交通省『住宅セーフティネット制度』
厚生労働省『令和4年度 国民生活基礎調査の概況』