(※写真はイメージです/PIXTA)
迷惑なので…25件の不動産会社に断られ
「もう、どうしたらいいのかわかりませんでした」
都内の事務職として働く高橋美咲さん(38歳・仮名)。膝の上には3歳の長男、そして背中にはもうすぐ2歳になる次男。そんななか、今の生活について話をしてくれました。
美咲さんは半年前に離婚し、以来、女手一つで息子を育てています。以前住んでいたのは、離婚前から住んでいた1Kのアパート。2人の男の子を育てていくには狭すぎる。もう少し広い部屋への引っ越しを決意したのが苦労の始まりでした。
「収入は月に手取りで18万円ほど。色々あって養育費は当てにできませんが、児童手当などの支援も含めたら、それなりにやっていける。家族3人で、慎ましく暮らしていける家賃5万円くらいのアパートを探し始めました」
駅前の不動産会社を訪れた美咲さん。しかし、担当者の表情は、美咲さんが「2人の息子と3人暮らしです」と告げた瞬間から、目に見えて曇っていったといいます。
「『母子家庭ですか……』と、あからさまに嫌な顔をされました。収入面を伝えると、『その収入だと保証会社の審査が厳しいですね』『事故物件でもよければ……』など、まともに取り合ってもらえませんでした」
一社だけではありませんでした。エリアを変え、不動産会社を変え、インターネットで見つけた物件に電話で問い合わせても、同じような反応が返ってきたといいます。
「子どもが小さいと泣き声が……」
「大家さんが母子家庭には難色を示していて……」
理由は様々でしたが、その根底には「母子家庭への偏見」が透けて見えました。
門前払いは、25件にも及びました。25件目の不動産会社で、疲れ果てた美咲さんが食い下がると、若い男性社員から耳を疑う言葉を投げつけられます。
「はっきり言いますけど、正直、片親って迷惑なんですよね。家賃の滞納リスクも高いし、何かとトラブルも多い。うちも商売なんで」
あまりの言葉に、声も出ませんでした。社会から、あなたたちは「迷惑な存在」なのだと烙印を押されたような感覚。悔しさと情けなさで、涙がこぼれ落ちそうになるのを必死で堪えたといいます。
美咲さんの苦悩は、今回に始まったことではありません。離婚直後、当時のアパートの大家からは「旦那さんがいなくなったなら、家賃を2万円上げる」「払えないなら出ていってくれ」と、理不尽な要求をされたこともありました。
「母子家庭というだけで、なぜこんなにも不当な扱いを……本当に、私たちにどう生きていけというのでしょうか」