家賃収入を法人売上にする際の注意点
法人化によって家賃収入を法人の売上として計上すると、所得分散や相続税対策の準備が整います。ただし、このスキームには大きく分けて二つの方法があります。
ひとつは、賃貸管理会社を設立し、物件の管理業務をその法人に外注するスキームです。この場合、家賃収入は引き続き個人の所得ですが、管理料を法人に支払うことで、所得の一部を法人の利益に移すことができます。ただし、管理料は家賃総額の5%から10%程度が無難とされ、これを逸脱すると税務署から否認されるリスクがあります。
もうひとつは、物件そのものを法人に所有させるスキームです。一般的には、法人に建物のみを所有させ、土地は個人が保有するスキームが多く採用されます。これにより、譲渡所得に関係する所得税や不動産取得税などの初期コストを抑えつつ、法人に家賃収入を移すことが可能となります。ただし、適正な地代の設定や無償返還届出書の提出が不可欠であり、税理士の助言を得た上での慎重な設計が必要です。
なお、消費税の取り扱いには注意が必要です。居住用賃貸物件の家賃は非課税であるため、取得時に支払った消費税を仕入税額控除で取り戻すことは原則としてできません。近時の法改正により、過去に多用された消費税還付スキームは厳しく制限されています。ただし、取得から3年以内に事業用として転用する場合や譲渡する場合は、課税売上割合に応じて一定の控除が可能なため、事業計画と連動させた慎重な運用が求められます。
相続・贈与対策としての法人活用
法人化の最大の強みは、税率コントロールだけでなく、相続と贈与対策にも直結する点です。不動産を法人に所有させておけば、相続時には現物不動産としてではなく、非上場株式(または出資持分)として遺産を分けることが可能になります。これにより、複数の相続人間で揉めやすい土地の共有という問題を回避することができます。
また、個人で不動産を所有している場合、借家権割合30%の控除を受けることができ、小規模宅地等の特例を適用することで50%の評価減を受けることが可能です。これに対して、法人名義で不動産を所有している場合は、相続の際には株式として評価されますが、株式評価において類似業種比準価額を適用できれば、個人所有時の不動産の評価額よりも低く評価されるケースが多くあります。個人と法人を比較した場合、法人を活用した方が相続財産全体の評価額をより小さく抑えることができ、結果として相続税負担の軽減につながるのです。
こうした節税効果と合わせて、毎年の基礎控除を使って生前贈与を行えば、相続発生時の課税財産を着実に圧縮することができます。これにより、相続税負担を計画的に軽減しつつ、資産承継を円滑に進めることが可能です。
株式会社エールが販売する不動産小口化商品「eLShare(エルシェア)」
詳細パンフレットを無料プレゼント中!
申込はこちら≫

