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抜け出せない貧困の連鎖…「普通の生活」を望む母の願い
由紀さんのような苦境に立たされているシングルマザーは、決して少なくありません。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、ひとり親世帯の相対的貧困率(可処分所得が中央値の半分を下回る世帯の割合)は44.5%。これは、子どものいる現役世帯(ひとり親世帯を除く)の10.6%と比較して突出して高い数値であり、ひとり親世帯の2世帯に1世帯近くが貧困状態にあるという厳しい現実を示しています。
3年前に夫と離婚した由紀さん。養育費の取り決めは行わなかったといいます。「別れた理由はいくつかあったのですが、そのひとつが元夫の暴力があったので……関わりたくなかったんです」と由紀さん。厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯において、「養育費の取り決めを行っていない」ケースは、全体の51.2%と半数を超えています。理由として最も多いのが「相手と関わりたくない」で50.8%。事情はさまざまでしょうが、由紀さんと同じようなケースも少なくないでしょう。養育費の取り決めが行われていない、行ったとしてもきちんと払われていない……母子世帯が貧困に陥りやすい理由のひとつです。
「もっと収入の良い仕事に就きたいという気持ちは常にあります。でも、今の職場は子どもの急な発熱や学校行事にも理解があり、休みが取りやすい。正社員になれば収入は増えるかもしれませんが、その分、融通は利かなくなる。もう少し拓也が大きくなるまでは…と、転職には踏み切れません」
夏休みが明けて給食が再開されたら、食費の心配は少しだけ和らぐ。栄養バランスの取れた食事をとることができる…。「本当に救われます」と由紀さん。
「でも、またすぐに冬休みが来て、春休みが来て…。そのたびに、この地獄のような思いをするんだと思うと、ため息しかでません」
由紀さんのような貧困に直面する母子世帯への支援として、公的・民間の支援が存在します。食のセーフティネットとしては、「フードバンク」や「子ども食堂」。自治体のホームページや社会福祉協議会で地域の情報を得ることができます。経済的にひっ迫した際には、社会福祉協議会が窓口となる「緊急小口資金」などの貸付制度もあります。無利子または低利子で一時的にお金を借りることができ、当座をしのぐ助けになります。
また、安定した収入を得るための就労支援も重要。全国に設置されている「マザーズハローワーク」は、子育てをしながら仕事を探す母親を専門にサポートする機関です。子育てに理解のある求人情報の提供や、キャリアアップのための相談に応じてくれます。養育費の問題も、諦める必要はありません。元パートナーと直接関わることなく、家庭裁判所での調停や法務省の「養育費相談支援センター」などを利用して請求手続きを進めることも可能です。
目の前の困難に1人で向き合っているなら、まずは身近な自治体の窓口に相談を。その一本の電話が、地獄のような日々を終わらせるための第一歩になるかもしれません。
[参考資料]
厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』
厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』