長い夏休みは、子どもにとって楽しみである一方で、家庭の事情によっては重い負担となることも珍しくありません。給食という確かな支えが途切れる39日間には、食事や生活を維持する現実的な苦労が浮き彫りになります。
やっと、地獄の夏休みが終わった…学校再開に歓喜する「42歳シングルマザー」。月収14万円・1日500円の食費で耐え抜いた「壮絶39日」 (※写真はイメージです/PIXTA)

給食のありがたみを痛感した「地獄の39日」

小学4年生の息子・拓也くん(仮名)の夏休みが終わり、ようやく日常が戻ってくると安堵する田中由紀さん(42歳・仮名)。声には隠しきれない疲労の色が滲んでいます。

 

「今年の夏休みは39日、ありました。長かった……本当に地獄のような日々でした」

 

由紀さんは、非正規の事務職員として働き、手取りの月収は約14万円。築20年を超えるアパートで拓也くんと2人で暮らしています。家賃や光熱費、通信費などを支払うと、手元に残るお金はわずか。栄養バランスの取れた食事を1食250円ほどで提供してくれる給食は、由紀さんのような家庭にとって、まさに命綱です。しかし、39日間にわたる夏休みは、その命綱が絶たれる期間でもあります。

 

「夏休みが始まると、単純に昼食代が毎日加算されます。夏休み中の食費は1日500円、1カ月で1万5,000円と最初に決めました。これ以上は、どうやっても捻出できなかったんです」

 

1日500円。これで親子2人の3食をまかなう生活は想像を絶するものです。たとえば朝は食パンにジャムを塗るだけ。昼はそうめんや、特売の冷凍うどん。夜は、業務スーパーで買った大袋の鶏むね肉や豚こま切れ肉を使い、もやしや豆腐でかさ増ししたおかずとご飯。拓也くんは育ち盛りの10歳です。

 

「『お母さん、お腹すいた』『今日の夜ごはん、これだけ?』。そう言われるたびに、途方に暮れてしまいます。スーパーの半額シールが貼られたお惣菜を見つけて『今日は少しだけ豪華な食卓になる』と、拓也が本当に嬉しそうな顔をするんです。その顔を見るのが嬉しくもあり、同時に申し訳なさで涙が出そうになる」

 

常に頭の中は食費の計算でいっぱい。栄養バランスなど考える余裕もなく、ただただ、どうやって空腹を満たすかということだけを考えていた、と由紀さんはいいます。拓也くんのお腹を満たすために、由紀さんは1日1食で済ますことも。この夏の猛暑の影響もあり、体重は自然と4キロほど、落ちてしまったといいます。