シーンと静まり返った休憩室。従業員はスマホを眺め、イヤホンで耳を塞ぎ、会話はない――。多くの職場の昼休みにみられる光景です。実は、休憩のとり方が職員のパフォーマンスを大きく左右することをご存じでしょうか? 本記事では、野本果甫氏の著書『人材育成はフィードバックが9割 部下が自走して成果を出すリーダーシップの在り方』(ごきげんビジネス出版)より、3つの事例とともに、パフォーマンス向上に直結するモチベーションの上げ方を解説します。
「休憩のとり方」を変えただけ…米銀行コールセンターが受注13%増、コスト12億円削減できた理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

2.「ほめる」ことで職場の雰囲気も業績も上がった事例

三重県伊勢市に「ほめちぎる教習所」という自動車教習所があります。南部自動車学校というところで「生徒をほめてほめてほめちぎる」をモットーに経営しています。『「ほめちぎる教習所」のやる気の育て方』という本も出ていて(加藤光一・著/KADOKAWA)、テレビでも特集されたことがありました。

 

少子高齢化や若者の車離れが進み、運転免許をとる人の数は減少しているのに「ほめちぎる教習所」にリニューアルしてから生徒の数を急増させた学校です。免許の合格率が3年間で4.5%もアップし、生徒の事故率を半数近くまで減少させる実績をあげています。ほめることで生徒との信頼関係が生まれ、親身に指導する指導員が増えたり、仕事のストレスで心を病んでしまう指導員や離職が減少したりする、という効果も生み出したそうです。

 

この学校が何をしたかというと、毎朝の朝礼で2人組になって互いのよいところを1分間ほめあうことを行い、ほめる練習をしたそうです。最初はぎこちなかったそうですが、毎朝行っているうちに、相手のよいところを見つけるようになり、ほめることが上手になっていったといいます。ほめられることに抵抗があった古参の指導員も、ほめられることをうれしいと思うようになり、指導員同士の会話が増え、職場の雰囲気も明るくなったようです。

 

つまりポジティブフィードバックが職員のモチベーションと職員同士の信頼関係をつくり上げ、それがお客さまである生徒にも影響して、よい成果につながったと思われます。

 

私自身もフィードバックや研修で、承認とポジティブフィードバックを大事にしていますが、相手のモチベーションを上げるために、これほど効果的な方法はないと思っています。

3.コールセンターの事例に見るモチベーションの高い職場の共通要素

私はコールセンターの応対品質、人材育成のコンサルタントとして活動するなかで、多くの現場を見てきました。どこのコールセンターでも共通して次のような問題がありました。

 

・ 忙しい! 時間がない!

・ できる上司もいれば、そうでない上司もいる

・ パフォーマンスが高いスタッフもいれば、低いスタッフもいる

・ 人が足りない

・ 体制や運営で整っていないところが多くある

 

このような状況は、どこの現場も同じく起こっています。なんの問題もない現場なんて見たことがありません。しかし仕事に対するモチベーションが高い現場もあれば、離職者が毎月大量に出ている現場もあります。

 

その違いはなんだろう?とよくよく観察して気づいたことがあります。それはモチベーションが高い現場には共通して3つの要素「やりがい」「つながり」「成長の機会」があることでした。私がそこで働くスタッフとの会話で実際に聞いた声です。

 

「仕事は大変だけど、お客さまや上司から『ありがとう』って言われるとうれしいです!」

 

「仕事は大変だけど、わからないことがあったとき親身に対応してくれるリーダーがいるので、ありがたいです!」

 

「難しいお客さまを受けたときは大変だけど、先輩やほかの仲間が助けてくれます」

 

「ここにいると新しい仕事や役割をもらえて、成長できるって思えます」

 

「みんなに助けられて新しい仕事を覚えることができるので、楽しいです」

 

「やりがい」とは、仕事で感謝されること、貢献できることだと私は思います。「つながり」とは、よい仲間がいて、お互いに励ましあったり、教えあったりできることです。「成長」とは、仕事を通して成長を感じる機会があること、成長できる期待を感じられることです。この3つがあると、人はモチベーションが高い状態で働けると感じています。そういう現場をつくっているのは、そこにいるリーダーの方たちでした。